2015 Fiscal Year Research-status Report
グリア主導で神経回路活動は改変できるか?ー三つ組みシナプス仮説の実証ー
Project/Area Number |
15K14354
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
和中 明生 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (90210989)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥田 洋明 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (40453162)
森田 晶子 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (70647049)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 運動 / 三つ組みシナプス / アストロサイト / 電子顕微鏡 / 微細構造 / 突起 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は淡蒼球における三つ組みシナプスの存在を形態学的に示すために、Olig2-CreERマウスとROSAーFlox-GAP43-EGFPマウスを交配させたダブルトランスジェニックマウス(以下ダブルTGマウス)に運動負荷を与える実験を行った。具体的にはダブルTGマウスを3群に分けて、コントロール群は固定して回らないランニングホイールを入れたケージ、ランナー群では回転可能なランニングホイールの入ったケ-ジ、ランナー休息群も同様のケ-ジに入れて3週間飼った。前2群はこの3週目で灌流固定し、淡蒼球におけるGFP免疫組織化学染色を行った。ランナー休息群はさらに3週間今度は固定したランニングホイールの入ったケ-ジで飼育し、その後灌流固定し免疫染色に供した。それぞれの群のGFP陽性アストロサイトの形態をまずレーザー共焦点顕微鏡で比較検討し、顕微鏡画像上の蛍光量をNIHImageソフトで定量し3群を比較した。ランナー群ではコントロールに比して有意に蛍光量が増大しており、またランナー休息群では減少傾向を認めた。さらにこれら3群のGFP陽性細胞の微細構造を電子顕微鏡で観察し、電子顕微鏡画像におけるGFP免疫陽性構造をNIHImageソフトで定量評価した。レーザー共焦点顕微鏡の結果と良く一致して、コントロール群に比してランナー群では単位面積あたりのGFP陽性の突起断片数が有意に増加しており、ランナー休息群ではコントロールと同じレベルにまで減少していた。いずれの群もGFP陽性構造の面積は有意差は無かった。これらの結果はランニングという運動負荷に応じてアストロサイトが形態を複雑化させていること、また一度複雑化した構造も、運動負荷が無くなると再び単純な構造に復することを示唆している。これは神経活動とアストロサイトの形態変化が強調している、すなわち三つ組みシナプスの存在を強く示唆するものと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画どおりに実験系は進んでいると考える。ただアストロサイト特異的な毒であるFluorocitrateを投与する実験は行ったが、有意な形態変化などが観察されなかった。この理由としてFluorocitrateの有効容量がかなり狭い可能性があり、次年度への課題と考えた。
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Strategy for Future Research Activity |
Fluorocitrateの容量が問題となるので、今後の研究においてはOlig2陽性アストロサイトにウイルスベクターを用いてジフテリア毒素を発現させる系を立ち上げて、この毒素実験に変わる物にしていきたい。現在このジフテリア毒素の発現実験を行っているところである。
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Causes of Carryover |
当初予定のアストロサイト神経毒Fluorocitrateを用いた実験系が予定どおり進まなかった関係で、動物、試薬等の使用が少なかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度においてはウイルスベクターを用いたジフテリア毒素をアストロサイトに発現させる実験を集中的に行うので、繰り越された資金はこの実験系の消耗品、動物などの使用に宛てる予定である。
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Research Products
(9 results)