2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K14364
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
宮部 貴子 京都大学, 霊長類研究所, 助教 (10437288)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 痛み / 表情 / サル / マーモセット / 行動 / fMRI |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ヒトに最も近縁な非ヒト霊長類の、痛みに関連する行動や表情を明らかにし、痛みの評価法について検証すること、特に痛みに関連する感情・情動に焦点を当てることを目的としている。 H28年度には、マカクザルのケージに取り付け顔を撮影するための、小型ビデオカメラの取り付け装置を製作した。その装置を用い、他の研究のために開腹手術をしたサルの手術前後の顔の動画および、デジタルビデオカメラを用いて行動の動画を撮影した。ニホンザルの放飼場においても、平常時および外傷を負ったサルの写真とビデオを撮影した。現在、イギリス、リンカーン大学のDaniel Mills教授との共同研究として、これらの写真と動画について、行動解析ソフトウェア「オブザーバー」を用いた行動解析と、MATLABソフトウェアを用いた表情解析の準備をすすめている。 さらに、新たに、慈恵会医科大学再生医学研究部の岡野教授のグループ、慶応義塾大学、実験動物中央研究所、東京大学獣医外科学教室の研究者と、コモンマーモセットの慢性痛に関する共同研究を開始することができた。共同研究では、小型霊長類であるコモンマーモセットの特性も活かし、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)も撮像する計画である。そのため、fMRIの際に使用する麻酔法として、意識レベルを緻密にコントロールするために、静脈麻酔薬プロポフォールを使用する予定である。H28年度には予備段階として、コモンマーモセットにおけるプロポフォールの母集団薬物動態解析をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ニホンザルの痛みがあると考えられる時、および平常時の動画や写真のデータは順調に収集できているが、それらを解析する時間を思うように確保できず、解析が進んでいない。また、イギリスの共同研究者ともコミュニケーションが疎になりがちである。打開策として、H29年度の7月に渡英して、データ解析についてディスカッションする予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、痛みのあると考えられる症例のビデオ撮影をおこなうとともに、ビデオ解析・表情解析を進める。H29年度の7月に渡英して、Lincoln大学の共同研究者とデータ解析についてディスカッションし、今年中に成果をまとめたい。また、痛みのあると考えられる時および平常時の表情の写真を含むアンケート票を作成し、ヒトがサルの痛みをどのように認識するかについてのアンケート調査をおこなう。尿の採取も続け、尿中の痛み関連物質についても模索を続ける。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた主な理由は、表情解析および行動解析に時間がかかり、思うように進まなかったことである。そのため、計画していたフェンタニルなどの麻薬性鎮痛薬の導入に至らなかった。また、尿中のコルチゾールおよびプロスタグランジン代謝物質の測定をする予定であったが、プロスタグランジン代謝物質は痛みの指標としては適切ではないことがげっ歯類の知見から明らかになったため、他の候補を模索中である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H29年度は、フェンタニルなどの麻薬性鎮痛薬を導入し、術後の表情、行動解析および、フェンタニルの薬物動態解析をおこなう。また、フェンタニル投与に必要なシリンジポンプの導入も検討している。表情、行動解析の遅れを取り戻すべく、夏にイギリスの共同研究者を訪問し、ディスカッションする。さらに、アンケート調査の準備もすすめ、できるだけ早く実施する。
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