2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K14391
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Research Institution | Aichi Cancer Center Research Institute |
Principal Investigator |
神田 輝 愛知県がんセンター(研究所), 感染腫瘍学部, 室長 (50333472)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | EBウイルス / 胃がん / 大腸菌人工染色体 / ゲノム編集 / 上皮細胞 / 感染 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、次世代シークエンサーの導入により、EB ウイルス株のウイルスゲノム塩基配列の多様性が明らかになり、疾患病原性との関連が注目されている。英国のグループが中心となって、様々な疾患由来EB ウイルス株の塩基配列決定が行われつつある。しかしながらこうした解析は、EB ウイルス潜伏感染細胞の全ゲノムDNA にわずかに含まれるウイルスDNA をhybrid capture 法で濃縮してから行われ、しかもリードが短い次世代シークエンサーは反復配列を苦手とするため、得られた配列は「虫食い状態」である。また塩基配列が決まったとしても、当然のことながら感染性ウイルス粒子の再構成はできない。 平成27年度の研究では、EB ウイルス潜伏感染細胞に対して、ウイルス環状ゲノム(エピゾーム)を一ヶ所切断するゲノム編集プラスミド、およびドナープラスミドを同時に導入することで、相同組換え修復によりウイルスゲノムDNA 全長(約170キロベース)を効率良くBAC(bacterial artificial chromosome、大腸菌人工染色体)クローン化する技術を確立した。この方法により胃がん細胞株由来の全長EB ウイルスゲノムを2株BAC クローン化し、第3世代シークエンサーで反復配列を含む全ウイルスゲノム塩基配列を決定した。クローン化したウイルスDNA を安定導入したHEK293 細胞は感染性ウイルスを産生した。すなわち胃がん細胞株内では厳密な潜伏感染状態で維持されていたウイルスを、感染性ウイルスとして再構成できた。このウイルスを不死化ケラチノサイトに感染させて安定潜伏感染細胞を樹立すると、変異型RAS 誘導発現による細胞死が阻止された。 胃がん、上咽頭がん、NK/T リンパ腫など様々な疾患の発生過程におけるEBウイルスの関与を考えていく上で、その過程に関与したと考えられるウイルス株そのものを単離・再構成できるという点で、本法の有用性が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初平成27年度に予定していた胃がん細胞株由来のEBウイルス株のクローン化および塩基配列のみならず、平成28年度に予定していた組換えウイルス産生、さらには感染上皮細胞の形質変化の確認まで研究が進んだため。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、新しい所属への異動に伴い、研究室整備および大臣確認実験の再申請が必要となる。そこで大臣確認を必要としない実験から開始することを予定している。すなわち平成27年度の研究により確立した技術を用いて、様々なEBウイルス潜伏感染細胞からのウイルスゲノムDNAのクローン化を試みる予定である。
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Causes of Carryover |
平成27年度の研究費の一部を、別財源でまかなうことができたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度に繰り越して、その研究計画の遂行のために使用する。
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