2015 Fiscal Year Research-status Report
ウイルスの伝播指向性を利用した中枢神経系への薬物輸送技術の新戦略
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15K14413
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Research Institution | Microbial Chemistry Research Foundation |
Principal Investigator |
水谷 壮利 公益財団法人微生物化学研究会, 微生物化学研究所, 研究員 (00376617)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 血液脳関門 / 血管内皮細胞 / ドラッグデリバリー |
Outline of Annual Research Achievements |
ポリオウイルス(PV)は消化管から侵入後、血液中から血液脳関門(BBB)を越えて脳実質部分に非常に速い速度で移行することは知られていたが、その伝搬の分子機構は未解明であった。申請者はin vitroモデルを用いた研究で、PVが細胞膜表面におけるFe3+輸送体であるトランスフェリンレセプター(TfR1)との結合を介し脳血管内皮細胞を越えるモデルを提唱した。しかしTfR1のノックダウンのみではPVの脳血管内皮細胞への透過を完全には抑えることができないことから、これとは異なるレセプター分子の存在が示唆された(Mizutani.T J Bio Chem. 2016)。
そこで改めてPVの外殻タンパク質表面に存在する中枢神経指向性の責任部位の見直しを進めてきたが、興味深い観察としてTfR1との結合の責任領域とは異なる血管内皮細胞への効率的な移行能を示す新たな2種類のペプチド部位(CPP-N4,CPP-N6と命名)を同定した。このCPP-N4、N6はマウス脳血管内皮細胞株(MBEC4、bEnd.3)、ヒト臍帯血由来血管内皮細胞(HUVEC)に効率良く細胞内移行を示す一方で、ヒト正常繊維芽細胞(NRDF)および他組織由来のがん細胞株ではそれが確認されない(現時点で50種類のがん細胞株パネルで確認済み)。つまり当該ペプチドはPVのBBB透過能を担う責任領域である可能性が高く、中枢神経系への薬物輸送担体としての有効性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は本研究目的の血液脳関門への到達が期待されるペプチドの必要十分領域の同定を終え、 次年度は機能解析への十分な時間的余裕が得られたため。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で見出したペプチドの細胞内移行には血管内皮細胞の細胞表面に特異的に発現する膜タンパク質の結合を介している可能性が高く、これに関わるそれぞれのレセプター分子の同定とその分子機構の解明は輸送技術の分子基盤の確立に必要不可欠であり、その積極的な解明を進める。
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