2016 Fiscal Year Research-status Report
ナノポアシークエンサーを用いた不明熱病原体ゲノムの同定
Project/Area Number |
15K14417
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鈴木 穣 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (40323646)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山岸 潤也 北海道大学, 人獣共通感染症リサーチセンター, 准教授 (80535328)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | ゲノム / 簡易型シークエンサー / 熱帯感染症 / 迅速診断 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、使い捨て簡易型USBシークエンサーMinIONを駆使して、熱帯感染症病原性微生物の種同定とゲノム解析を行う。熱帯熱マラリア原虫、デングウィルス、B型肝炎ウィルス感染患者について、血液から簡易核酸増幅法を用いてそれぞれのゲノムを増幅、単離したのちにMinIONシークエンサーで解読して、その配列相動性から、微生物の同定および薬剤耐性遺伝子等、臨床的に重要な意義を持った遺伝子多型の検出を行った。昨年度までにマラリア、デングに関しては、その研究室環境での試験を完了、引き続きインドネシアマナド市において、その実用試験試験を行った。必要となる情報解析パイプラインも簡略化、ノートPCでの実行を可能とした。また部分的にそれが難しい部分については、ウェブ上で非専門家でも投入が可能な形でのブラウザを整備した。結果、のべ50症例を用いた試験的運用を行い、えられた結果をRT-PCR法、イルミナシークエンス法あるいはサンガーシークエンス法で確認した。上記のいずれの系においても十分な感度と精度で測定が行われていることが確認されたことから、新手法について従来の手法に比較して十分に将来の実用に性能での実用試験に成功したと考えている。また、16S rRNA増幅系を用いることにより細菌感染についても同様の系を構築することができた。実験室環境では、本系により簡便に細菌感染源の同定を行うことが可能であった。ただ、これらのいずれも想定される種ごとに設計したプライマーあるいはそれらのカクテルを用いた増幅によるものであって、ランダムな拡散増幅系を用いた系の確立にはまだ成功してない。最終年度を迎えるにあたり、この系の構築の完了をもって、最終成果としたいと考えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
使い捨て簡易型USBシークエンサーMinIONを駆使して、熱帯熱マラリア原虫、デングウィルス等の熱帯感染症感染患者について、MinIONシークエンサーを用いてゲノムシークエンスを解読して、その配列相動性から、微生物の同定および薬剤耐性遺伝子等、臨床的に重要な意義を持った遺伝子多型の検出を行う方法論について昨年度までにマラリア、デングに関しては、その研究室環境での試験を完了、引き続きインドネシアマナド市において、実用試験試験に成功している。同地区では、のべ50症例を超える症例について、感染する病原体の種同定とゲノム配列の取得に成功した。なかでも熱帯熱マラリア原虫において、代表的な抗マラリア薬であるアルテミシニン耐性との関連が示唆されるPfK13遺伝子において、同地区に多くのゲノム多型が検出された。現在、この多型にして集約的にイルミナ、サンガーシークエンスによる検証を行っている。多型が確認された場合、研究室環境下でその生物学的活性を測定する予定である。また抗マラリア薬クロロキンについてもPfCRT遺伝子における現地での変異カタログの創出に成功した。これにより当初の計画の第一段階が達成できたと考えている。また、これら、一連の解析から得られたデータについてデータベースとして公開すべく、別途、データ格納システム、表示ウェブブラウザの整備を進めてきたところであるが、それも一定の目途がたっている。産出されたデータについては、今年度、夏以降に順次公開を進める予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初目的としていたMinIONシークエンサーを用いた熱帯病原性微生物の同定とゲノム解析は、熱帯熱マラリア原虫、デングウィルス、チクングニアウィルス、細菌感染(16S rRNAシークエンス)に関しては、実験室環境での検討を終え、実地試験においても一定の成果を上げることができた。ただ、これらのいずれも想定される種ごとに設計したプライマーあるいはそれらのカクテルを用いた増幅によるものであって、ランダムな拡散増幅系を用いた系の確立にはまだ成功してない。昨年度までの検討で、ランダムな核酸増幅系では、増幅される核酸の収率が十分でないか、あるいは十分な収量を得ようとした場合、ヒト核酸由来の増幅産物が多く混入することが観察された。プライマー系および酵素系を改変することにより問題の解決に努めてきたが、現在のところ実用的な条件を発見するには至っていない。ただし、今年度に入り、MinIONシークエンサーが要求する鋳型量が大幅に低減されるオプションが提示された。この鋳型調整系を用いると従来の1/10以下の出発材料で反応を行うことが可能であるという。そこで核酸増幅反応を最小限に抑えることで、ヒト由来試料の混入をどの程度、低減することが可能であるか現在、検証を行っている途中である。
|
Research Products
(4 results)