2015 Fiscal Year Research-status Report
多様な修飾ヒストンのライブラリー化に向けた基本技術の開発
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15K14418
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
末武 勲 大阪大学, たんぱく質研究所, 准教授 (80304054)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川上 徹 大阪大学, たんぱく質研究所, 准教授 (70273711)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ヒストン修飾 / 有機化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞核内の基本構造であるクロマチン構造を形成するヒストン分子のN 末端領域(テール)の修飾は、遺伝子発現調節において重要な役割を果たす。これまで、修飾を施した天然と同じ配列をもった全長ヒストンの合成が困難であるため、修飾を施したテール領域の合成ペプチドとの相互作用解析が主流であったが、この方法では、構造を基盤とした調節機構を明らかにできない。
本計画では、有機化学と大腸菌を用いた生化学的手法を融合させ、生物系の研究者でも容易に目的の修飾を施したヒストンの調整法の確立を目指す。修飾には、様々な種類またや組み合わせが報告されているが、その中でも、最も修飾が多彩で機能的に重要なヒストンH3 に焦点を絞り、化学合成と遺伝子工学を組み合わせ、天然と同じ配列を持った分子を調製した。
ヒストンH3の9番目のリシン(K9) にメチル化を入れた分子の合成を始めた。リシンのメチル化には、3種、モノメチル化(me1)、ジメチル化(me2)、トリメチル化(me3) 修飾がある。ヒストンH3K9 のメチル化修飾はme2 とme3 がHP1 など選択的に結合する因子によりクロマチン凝集状態が変化し、それにより遺伝情報発現の抑制に寄与していることが明らかにされているが、me1 を始めその価数の違いが果たす機能については明確な生化学的検証はない。平成27 年度は、K9me3を導入した入れたヒストンH3 合成法の確立と大量調製の確立を試み、それに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
初年度に、K9をトリメチル化したヒストンH3の調製に成功し、それを論文かできたので(Kawamami et al., J. Biochem. 2015)、計画以上に研究が進行したと考えている。 まず、H3のどの部分を化学合成し、連結に用いるかを決定する必要がある。連結部には、アラニン(Ala)を用いるので、H3N 末端テールにあるA25、A29、A47 について、Ala の一つ前のアミノ酸残基までにKme3 をいれたペプチドを合成機で合成した。なかでも、最も効率良く合成されるペプチドとしてA25までのペプチドの合成効率が良いので、その部分を有機化学的に調製することに選定した。これに続くC 末側断片のN 末端Ala をCys に置換したコンストラクトを構築し、大腸菌で組換え体を発現・精製する。これには、いくつかベクターを試したが、pCold系のベクターが最もよかった。タグをつけて発現・精製させておいてから、タグをSENP2で切り離し、再度精製する方法が効率よく回収できた。H3のC 末の組換えペプチドの配列内部には、Cys 残基が存在するので、内部のCysのみを特異的に保護剤によりブロックする。その後、N 末修飾ペプチドとC 末組換えペプチドを化学的に連結する。連結後、分子内部のCysのブロックを除去する。これらのステップにより、K9がトリメチル化されたH3を調整することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、トリメチル化修飾以外の修飾を導入したヒストン分子の調整を試みる。具体的には、最近、ユビキチン化ヒストンが、他のエピジェネティックな制御機構(DNAメチル化)と関連がある可能性が報告されている。しかしながら、どのようにDNAメチル化酵素にユビキチン化が影響を与ええるのか不明である。ユビキチン化は、これまでにSS結合で主鎖につなげている場合が多く、生体反応を行う還元条件化では活用できない。そこで、還元条件下でも切断されないよう、ユビキチン化したヒストンH3の調整を試みる。同時に、他の修飾についても、検討を行う。
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Causes of Carryover |
本年度は、研究計画以上に、計画が順調に進んだため、予定額より支出が低くなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、さらに計画を前倒しして、研究を行うつもりである。具体的には、ユビキチン化ヒストンの合成、ならびにその物性について調べようと考えている。
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Research Products
(11 results)