2017 Fiscal Year Research-status Report
多様な修飾ヒストンのライブラリー化に向けた基本技術の開発
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15K14418
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Research Institution | Koshien University |
Principal Investigator |
末武 勲 甲子園大学, 栄養学部, 教授 (80304054)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川上 徹 大阪大学, たんぱく質研究所, 准教授 (70273711)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ヒストン / ユビキチン化 |
Outline of Annual Research Achievements |
エピジェネティクスは、DNAの塩基配列に依存しない遺伝子発現制御である。その制御機構には、代表的なものとして、ヒストンの化学修飾とDNAの塩基の修飾がある。ヒストンH3は、N末端付近にてユビキチン化されることが知られ、この修飾ヒストンは、DNAメチル化と関連があると報告がある。しかし、その分子機構は不明であったので、有機化学的にユビキチン化ヒストンを用意し(Kawakami et al., 2016)、DNAメチル化維持酵素(Dnmt1)活性に与える効果を調べた。その結果、非常に低い濃度(数十nM)のユビキチン化ヒストンH3が、Dnmt1活性を5倍以上促進することを見出した(Ishiyama et al., 2017)。また、共同研究で、両者は、活性促進に見られる濃度で結合すること、さらに両者が結合した複合体の立体構造を明らかにした。構造から、ユビキチン化ヒストンH3は、Dnmt1のN末端に存在するRFTSドメインをゆがめることが分かった。RFTSは、ユビキチン化ヒストンH3非存在下の時は、触媒部位にはまり込んで、触媒部位に基質DNAがアプローチできないようになっている。しかし、ユビキチン化ヒストンによりRFTSが構造変化し、触媒部位に基質DNAが入り込むことができるようになり、活性促進することが分かった。 一方、高濃度の非修飾ヒストンH3が存在すると、Dnmt1のメチル化活性は阻害され、ヒストンH3がアセチル化されるとその阻害が解除されるということも、合成ヒストンH3を用いて明らかにできた(Mishima et al., 2017)。このように、目的の修飾を目的のアミノ酸に自由に導入する系を構築できたことにより、エピジェネティクス制御間の関連性を明らかにすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
一般的には、ユビキチン化蛋白は、ユビキチン化するアミノ酸をシステインに置換し、ユビキチンと目的の蛋白とを-S-S-結合でつなぐ。この連結方法では、還元剤を含む試験管内での反応は、両者が解離してしまい、効果を調べる事ができない。そこで、還元条件下でもユビキチンがはずなれないよう、特異的な合成法を開発した。
還元条件下でも開裂しないユビキチン化ヒストンH3ペプチドを合成し(Kawakami et al., 2016)、これを用いることで、DNAメチル化との関連性を明らかにできた(Ishiyama et al., 2017)。合成は、ヒストンN末端領域のペプチドだけでなく、より生理的な機能解析をするため、ケミカルライゲーション法を使って、全長のユビキチン化ヒストンH3を用意することにも成功した(Kawakami et al, 2017)。このユビキチン化ヒストンH3と、大腸菌で発現精製したヒストンH2A,H2B.H4とDNAを用いて、試験管内でヌクレオソームを再構成できた(Kawakami et al., 2017)。その結果、ユビキチン化ヒストンでも、非修飾のヒストンH3と同様の性質をもつヌクレオソームが再構成できることが分かった。具体的には、ヌクレオソームの性質として、ユビキチン化を導入しても、ヌクレアーゼの耐性がほぼ同じであること、熱安定性がほぼ同じであること、2価金属による沈澱の様子が同じであることが分かった(Kawakami et al., 2017)。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに、ユビキチン化ヒストンは、Dnmt1活性を低濃度で、促進することを見出したが、その促進機構の酵素学的性質の理解は不十分である。そのため、まずユビキチン化ヒストンが、Dmmt1酵素反応のどのステップを促進するかについて、検討する。具体的には、メチル基をDNAに導入する段階か、それより下流の段階を促進するか調べる。さらに、Dnmt1は維持メチル化活性に加えて、新たにメチル基を導入する活性(de novo活性)も持つので、de novo活性に、ユビキチン化ヒストンが影響を与えるかを検討し、DNA基質特異性明らかにする。さらに、Dnmt1のRFTSドメインに、ユビキチン化ヒストン結合するので、RFTSを削ったDnmt1に対しては、ユビキチン化ヒストンの効果が出ないかなどを検討し、RFTSドメインの重要性を確認する。こうして、ユビキチン化ヒストンの効果の詳細を明らかにする。
一方、非修飾ヌクレオソームをDnmt1基質にすると、ヌクレオソーム間の裸のDNA部位はDnmt1によりメチル化されるが、ヌクレオソーム上のDNAはメチル化されにくい傾向があった。しかし、ヌクレオソーム上のDNAは、その末端部分は、中心部分よりDnmt1によりメチル化されやすい傾向を示した(Mishima et al., 2017)。今後は、それについて、ユビキチン修飾の与える効果を調べる。このようにして、ヒストンユビキチン化修飾の果たす役割を詳細に調べ、さらには異なる修飾にもアプローチしたい。
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Causes of Carryover |
2017年に、大学が移動になりました。 そのため、研究遂行に遅れが生じました。それに伴って、研究費の使用額が減少しました。本年度は、残り91万3064円を使用させていただきます。
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[Journal Article] RFTS-dependent negative regulation of Dnmt1 by nucleosome structure and histone tails.2017
Author(s)
Mishima Y, Brueckner L, Takahashi S, Kawakami T, Arita K, Oka S, Otani J, Hojo H, Shirakawa M, Shinohara A, Watanabe M, Suetake I
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Journal Title
FEBS J.
Volume: 284
Pages: 3455-3469.
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Samd7 is a cell type-specific PRC1 component essential for establishing retinal rod photoreceptor identity.2017
Author(s)
Omori Y, Kubo S, Kon T, Furuhashi M, Narita H, Kominami T, Ueno A, Tsutsumi R, Chaya T, Yamamoto H, Suetake I, Ueno S, Koseki H, Nakagawa A, Furukawa T.
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Journal Title
Proceedings of the National Academy of Sciences.
Volume: 114
Pages: E8264-E8273.
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Structure of the Dnmt1 reader module complexed with a unique two-mono-ubiquitin mark on histone H3 reveals the basis for DNA methylation maintenance.2017
Author(s)
Ishiyama S, Nishiyama A, Saeki Y, Moritsugu K Morimoto D, Yamaguchi L, Arai N, Matsumura R, Kawakami T, Mishima Y, Hojo H, Shimamura S, Ishikawa F, Tajima S, Tanaka K, Ariyoshi M, Shirakawa M, Ikeguchi M, Kidera A, Suetake I, Arita K, Nakanishi M
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Journal Title
Mol Cell
Volume: 68
Pages: 350-360
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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