2015 Fiscal Year Research-status Report
細胞内異常蛋白質凝集体を効率よく分析できるプロテオミクス新手法の開発
Project/Area Number |
15K14427
|
Research Institution | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群) |
Principal Investigator |
市村 徹 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工, その他部局等, 教授 (50213012)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹清 貴浩 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工, その他部局等, 准教授 (00545981)
八谷 如美 東京医科大学, 医学部, 教授 (30408075)
田岡 万悟 首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (60271160)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | レーザーカッター / 質量分析 / プロテオミクス / アグリゲート / TRIM32 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は基礎期として、卵白蛋白質やカルモデユリンなどの既知蛋白質凝集体を用いてシステムの条件整備を行った。また、他のサンプルとして、取り扱いが容易で、かつ凝集のゆるいTRIM32ユビキチンリガーゼが形成するcytoplasmic body (以下CB)も用いて検討した。 熱凝集させた卵白蛋白質を効率よく可溶化できる溶媒組成を、塩酸グアニジンや尿素などの既知溶媒、またはこれまで報告されていない可溶化溶媒を用いて検討し、最も効果的な溶媒系を決定することができた。同溶媒を用いた場合、熱凝集した卵白蛋白質を~50 mg/mlで可溶化できることが明らかとなった。またこの濃度は、同溶媒にインキュベートする時間を長くすることで、より増大することも明らかとなった。熱凝集した卵白蛋白質は、最も難溶な凝集体を形成することが知られているので、決定した溶媒系は、他の多くの凝集体の可溶化にも効率よく適用できるものと推定された。 HEK293細胞にTRIM32を過剰発現しCBを形成させた。このCBを改良型マイクロレーザーカッター(ALMD)で直接単離回収し、トリプシン消化後、質量分析計で解析することで、何細胞からのCBが本分析に必要かを見積もった。その結果、わずか10細胞から切り出したCBで十分分析できることが明らかとなった。これは当初の見積もり(~1000個)を大きく下回る数であり、LC-MS分析系の高感度性を表わすとともに、今後の実験を容易にするものと推定された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験当初、最大の難関は蛋白質凝集物をいかにして可溶化するかにあると考えていた。熱凝集した卵白蛋白質は、10%SDSにも難溶な凝集体を形成する。この凝集体を50 mg/mlで可溶化できる溶媒系を確立できたことは、この問題を大きく進展させるものと期待される。しかし、同溶媒は変性条件にあることから、今後は可溶化された蛋白質から同溶媒を除去する工夫が必要になる。10個の細胞から、切除・回収したCBで十分質量分析ができることが分かった。このことは、今後試料を準備することが極めて容易であることを示唆するものである。しかし、現段階においては可溶性蛋白質の混入もかなり認められることから、ALMDによる切除条件の高精度化が求められる。
|
Strategy for Future Research Activity |
上述した通り、熱凝集した卵白蛋白質を可溶化する溶媒は変性条件にあることから、現状ではトリプシン消化が行えない。それゆえ、サンプルから同溶媒を除去する工夫が必要になる。透析は可能であるが、凝集サンプルが微量であることから他の除去操作も検討する予定でいる。ALMDによる切り出し精度を向上させるためには、PC制御による自動化を考えている。また、これらの検討を組み合わせることで、CBの内包プロテオームの解析を再度試みる予定でいる。さらに、同操作を生検サンプルから切り出した凝集物の解析に実際に適用することで、その成分組成を明らかにする予定でいる。
|
Causes of Carryover |
実験補助を開始した時期が、7月半ばからであり、当初予定していた4月からではなかったこと。また、消耗品が当初予定していた量ほど必要ではなかったこと、などが主な理由である。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
人件費の1年分と物品費に使用する予定である。
|
Research Products
(1 results)