2017 Fiscal Year Research-status Report
高感度変異検出法の開発を目指した多能性幹細胞ゲノム維持機構の解明
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15K14430
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Research Institution | The University of Kitakyushu |
Principal Investigator |
日高 京子 北九州市立大学, 基盤教育センター, 教授 (00216681)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 多能性幹細胞 / ミスマッチ修復 / 細胞死誘導 / MSH2 |
Outline of Annual Research Achievements |
DNA修復と細胞死誘導は多能性幹細胞のゲノム維持機構に大きな役割を果たしていると考えられる。ミスマッチ修復に関わるタンパク質群はDNA修復のみならず、細胞のアポトーシス誘導にも必要であり、ミスマッチ修復因子MSH2に着目して昨年度に引き続き研究を行った。
MSH2のATPaseドメインG674に生じた変異はミスマッチ修復能を損なうが、アポトーシス誘導能は損なわないとする興味深い結果がマウスにおいて報告されていた。ミスマッチ修復とアポトーシス誘導の関連を明らかにするため、昨年度までにヒト細胞であるHeLa細胞にCRISPR/Cas9を用いたゲノム編集により、当該変異をノックインした細胞を作製し解析したところ、マウスで観察された現象が必ずしも当てはまらないことがわかった。本年度は発現タンパク質について詳細な解析を行った。その結果、大腸がんを多発するLynch症候群で報告されているG674RおよびG674D変異は、人工的に導入したG674A変異と異なり、タンパク質の安定性そのものに影響していることが示唆された。
一方、多能性幹細胞であるヒトiPS細胞は高度なゲノム維持機構を有するが、ミスマッチ修復機構の関与については十分な解析がなされているとは言い難い。そこで本年度はゲノム編集により作製したMSH2ノックアウト株について、基礎的な解析を行った。MSH2ノックアウトiPS細胞株は未分化マーカーであるアルカリフォスファターゼ陽性であり、幹細胞としての性質を保持していることが示唆された。マウス細胞やHeLa細胞と同様に、ヒトiPS細胞においてもMSH2欠損にょりアルキル化剤耐性となり、細胞死誘導が起こらなくなっていることがわかった。現在は突然変異頻度解析のための準備を進めているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
大学での業務が増えたなどの理由により、一時期ほとんど研究ができなかったため延長申請を行った。 ヒトiPS細胞についてはある程度予想していたことではあるが、培地交換や継代に手間がかかり、変異解析においてスケールアップして解析するにはコストもかかる。培地および培養条件を見直したため、ノックアウト株の解析がやや遅れた。
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Strategy for Future Research Activity |
ミスマッチ修復とアポトーシス誘導の関連の詳細についてはG674変異のHeLa細胞における解析を進め、得られた知見をまとめ、論文化したいと考えている。 ヒトiPS細胞についてはMSH2欠損細胞株の基礎的解析を継続し、HPRT遺伝子座を利用した自然突然変異頻度を測定し、変異株が期待通り高感度に変異を検出できる「ミューテーター」となっているかどうかを確認する。また、アルキル化剤以外のDNAダメージに対してどのような応答性を示すかを解析し、多能性幹細胞におけるゲノム維持機構の解明につなげたいと考えている。
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Causes of Carryover |
(理由)実験が一時的にできない状態にあったため (使用計画)iPS細胞の培地等の購入に当てる
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Research Products
(2 results)