2016 Fiscal Year Annual Research Report
Cryopreservation of Drosophila genetic resource using primordial germ cells
Project/Area Number |
15K14441
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
田中 大介 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 遺伝資源センター, 研究員 (60425593)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 昆虫遺伝資源 / ショウジョウバエ / 始原生殖細胞 / PGC / 超低温保存 / 凍結保存 / ガラス化 / 急速冷却 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究において昆虫遺伝資源ショウジョウバエの超低温保存法の確立に成功した。ショウジョウバエは生命科学分野の研究で欠かすことのできない生物資源であり、その歴史は100年以上ある。ショウジョウバエの系統は全世界で10万系統を超え継代維持には、多額の飼料代等の消耗品や人件費がかかり、負担が増大しつつあるのが現状である。さらに、系統を継代維持する過程において、経過時間とともに突然変異等の遺伝的変異が蓄積し、当初の表現型を観察することが困難になる等の問題も生じ研究上支障が出る場合が多い。ショウジョウバエ受精卵は低温や凍結に対する耐性が低く、これまでショウジョウバエ胚を凍結保存する技術が論文として発表されたことはあるが、実用的な効率で凍結することはできずにいた。そこで、発生学の研究分野において研究が進められているショウジョウバエの精子や卵子の元となる始原生殖細胞(Primordial Germ Cells: PGCs)を、生物遺伝資源保存という観点で実験に用いた。 本研究では始原生殖細胞を細いガラス針(内径10~20μm)で吸い取り、凍結防御剤(ガラス化液)で処理しガラス針ごと液体窒素で急速冷却して超低温保存した。昇温(解凍)後にそれをホスト胚に移植し、その始原生殖細胞に由来する子孫を得ることで系統を復活させる方法を開発した。この時、最適な氷晶防止剤の種類、濃度を明らかにし汎用性が高く(低細胞毒性)、高い生存率が得られる昆虫専用ガラス化液を開発した。また、冷却速度、昇温速度等の条件検討をおこない最適処理条件を明らかにした。 本研究において、超低温保存を行ったドナー由来F1ショウジョウバエの産生率はおよそ50%であった。この値は、超低温保存せずに始原生殖細胞をホストに移植して得られるドナー由来F1産生率とほぼ同等の効率といえる。国内のみならず技術供与が求められる可能性が高い。
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