2015 Fiscal Year Research-status Report
哺乳類低容量ストレス応答の分子機構とその生物学的意義
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15K14449
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
石川 冬木 京都大学, 生命科学研究科, 教授 (30184493)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ミトコンドリアDNA / 制限酵素 / 暦寿命 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画書では哺乳類細胞に種々の強さ、持続時間のストレスを与えたときのeIF2αのリン酸化の程度をストレス反応のリードアウトとして解析する予定であったが、eIF2αのリン酸化を促すようなERストレスなどのストレスを定量的に与えることが困難であることが分かったので、実験系を以下の通り変更することとした。分裂酵母にミトコンドリアターゲッティング配列(MTS, mitochondria targeting sequence, MTS)をN末端にもった制限酵素EcoRI(MTS-EcoRI)を発現させた。プロモーターに培地中のチアミンの有無で発現誘導可能なRep81を用いた。このプロモーターはチアミンが存在するときには発現が抑制され、チアミン非存在下では誘導される。培地中チアミン濃度を調節することで、MTS-EcoRIの発現量を調節可能であることを確認した。 次に、分裂酵母が対数増殖期中にチアミン非存在下に移しMTS-EcoRIを発現させた。MTS-EcoRIはミトコンドリアに輸送され、ミトコンドリアDNA損傷をもたらすことを示した。予想外の表現型として、このような細胞は静止期以降の生存率(chronological aging、暦寿命)の低下が野生型酵母に比べて遅く、静止期寿命が延長することが分かった。今後は、MTS-EcoRIの発現量と発現時期を変化させて、ストレス・ストレス反応の関係を詳細に観察する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画にあったストレス反応後のeIF2αリン酸化レベルを観察する実験系は、定量的な観察が困難であることが明らかになったので、異なる方法で研究目的であるストレス・ストレス反応の反応曲線を解析する系を構築する必要があった。そのために、分裂酵母を用いたMTS-EcoRI発現誘導系によるミトコンドリア機能を誘導的に低下させる系の構築を新たに開始した。その結果、定量的なストレス誘導が可能なばかりか、強くMTS-EcoRIを誘導すると、ミトコンドリアDNAが消化され、それと同時に暦寿命が延長することが分かった。この知見はこれまでに報告がない全く新規な事実であり、本研究は当初計画以上の進捗を得ることができたと評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
培地中チアミン濃度を変化させることで、MTS-EcoRI量を再現性よく発現誘導することが可能かどうかを確認する必要がある。期待通りの定量的誘導を得ることができない場合には、MTS-EcoRI量を誘導発現させるRep81プロモーター以外の方法を考える必要がある。
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Causes of Carryover |
MTS-EcoRIの定量的発現誘導を確認する必要が生じたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
MTS-EcoRIが暦寿命延長をもたらす分子機構を解明し、明らかになった経路の活性化と暦寿命延長という表現型がMTS-EcoRI発現量を変化させることでどのようなdose-response関係を示すのかを明らかにする。
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