2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K14462
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
和田 郁夫 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (40182969)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 小胞体 / 揺らぎ / 品質管理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、これまで新たに我々が見いだした、細胞内の膜構造、特に小胞体自体に観測される微小な揺らぎに焦点を置き、その発生機序と細胞機能における役割について明らかにすることを目的とする。28年度は、この動きの普遍性・一般性について検討し、同時に、細胞内で観察される顕著な偏りがなぜ起きるのかについて調べ、その発生機序を調べるための実験系の作成を行った。 前者の結果として、調べたすべての細胞種、これは体細胞だけでなく生殖細胞においても同様であり、特定の細胞においてのみ起きる現象ではないことが明らかになった。 動きの発生は極めて不均一であるために、その機序を知るためには、単一細胞で同一の場所への作用を知る必要があり、モニターする分子と調べる分子を別々に調節的に発現する必要がある。それを可能にするために、様々な測定系を検討した。結果的に組み合わせて使用できたのは、ラパマイシン由来化合物の存在によりタンパク間の結合を引き起こすrtTAを改良して作成した単一ベクター系と、ecDHFRに蛍光タンパクを融合させたタンパクにさらに調べたい遺伝子を融合させる系であった。後者ではecDHFRを安定化する試薬の添加により融合タンパクの発現をオンオフできるシステムである。現在、この2つの調節的発現システムを用いて、shRNAにより新たに関与が示唆された因子群について膜構造の微小な動きを作る機構への関与を解析しており、この現象が予想外の制御を受けることを見いだしている。 また、この現象の生理作用を知るために、新たに作成したshRNAベクターを用いて抑制することが示唆された微小管と結合する小胞体膜タンパクの遺伝子の調節性発現を行うためには、後者のベクター系のみが可能であることがわかり、この系で揺らぎを外部より抑制する安定な系を作成した。これにより内腔での反応速度が変化する知見が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目的とする構造揺らぎは、不均一性が高いために、単一細胞で、同じ場所における、様々な因子の影響を調べる必要がある。測定には速い動きをモニターする分子と、調べたい因子を別々のタイミングで発現させる必要があり、技術的なハードルが高かったが、新たに登場してきたベクター構築技術を取り入れることで、必要なシステムを作ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
小胞体の微小揺らぎを起こす因子の同定が最優先で、これができれば本課題が対象とする現象の生理機能について正確に解明することができるはずである。上記に記した系を駆使することにより、これらの解明を進める。なお、解析の過程で、速い揺らぎと遅い揺らぎが存在し、異なる分子が関与することが示唆されたが、本研究では、より反応に関与する可能性の高い前者の動きに絞って、検討する。
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Causes of Carryover |
計上した予算との相違の主な理由は、旅費が一つの学会発表をキャンセルしたことと、顕微鏡用部品が予想以上に状態が良く、想定した交換がまだ必要でなかったこと、合成DNAの大幅に廉価なサービスが使用できたためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
28年度の使用計画は、前年度使用しなかった顕微鏡用消耗品も加えた物品費が127万、旅費が20万、謝金10万、論文作成掲載費用として50万を予定している。
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