2015 Fiscal Year Research-status Report
mRNA配列中のシュードウリジンの生理的意義の解明
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15K14466
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
弟子丸 正伸 福岡大学, 理学部, 准教授 (70309889)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 転写後修飾 / シュードウリジン / 遺伝情報再コード化 / mRNA |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)mRNA上の既知修飾部位におけるシュードウリジル化の定量法の確立 次世代型DNAシークエンサーを利用した近年の研究により、mRNA上の多くのヌクレオチド部位にシュードウリジル化修飾が同定されている(Carlile et al. Nature 515, 143-146 (2014), Schwartz et al. Cell 159, 148-162 (2014))。しかし、これらは間接的な方法であるために、各部位におけるシュードウリジル化率を求め試料間で比較することは困難であった。そこで、培養条件の異なるHEK293細胞より抽出した複数のRNA試料について、従来の方法(Ofengand et al. Methods 25, 365-373 (2001))に従いシュードウリジン特異的にCMC化修飾を施した後、修飾部位を跨ぐ位置に設計したプライマー対を用いた逆転写-リアルタイムPCRによりシュードウリジル化率の定量を試みた。その結果、この方法はあくまでも半定量的解析ではあるものの、試料間の特異的部位におけるシュードウリジル化率の差異を明確に示すことができた。 (2)シュードウリジル化修飾を介した遺伝情報再コード化の解析 ヒトの8種類のmRNAおよびrRNAについて、上記方法により既知の修飾部位におけるシュードウリジル化率の血清飢餓による変動を調査した結果、2種類のmRNA上に報告された部位で比較的大きな修飾率の変動が見出された。すなわち、これらのmRNAにおいては、血清飢餓ストレスに応答したシュードウリジル化修飾の変化が、細胞において何らかの生理的変化を導いている可能性がある。そこで現在、これらのmRNAにおけるシュードウリジル化がコードするアミノ酸配列に及ぼす影響の解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
mRNAにおけるシュードウリジル化修飾に関するこれまでの報告は修飾の発見に関するものであり、多くのmRNAにおけるシュードウリジル化率が血清飢餓ストレスに応答して変化を示すことをこの現象の生理的意義の論拠とはしていたが、塩基修飾自体に関する情報しか得られず、それらの生理的な意義に関する考察は困難であった。本研究は初年度において、上記で報告されたmRNAのうち少数について、血清飢餓に応じたシュードウリジル化率の変動の大きさを調査した。その結果、著しく大きな変動を示す2種のmRNAを見出した。これらのmRNAにおけるシュードウリジル化は血清飢餓を発端とした細胞の変化を仲介する役割を担っている可能性が高いと見なすことができ、次年度の研究により翻訳産物の構造に及ぼす影響を明らかにする計画である。
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Strategy for Future Research Activity |
血清飢餓ストレスに応じて修飾率の大きな変動を示した2種類のmRNAについて、修飾部位周辺を模したミニmRNAを構築する。修飾部位がシュードウリジンであるもの及び未修飾のウリジンであるものを調整し、各々について真核細胞由来のin vitro翻訳システムを用いて翻訳産物を得る。得られたペプチド産物を質量分析及びアミノ酸配列解析することにより、コドンのシュードウリジル化に応じたアミノ酸置換を明らかにする。さらに、その結果に応じて、これらのmRNAに対応したタンパク質に同様のアミノ酸置換を導入して培養細胞内で発現させることにより、mRNA上の特異的部位におけるシュードウリジル化がタンパク質産物の生理機能に及ぼす影響について調査する。
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Research Products
(7 results)