2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K14489
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
森垣 憲一 神戸大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (10358179)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 生体膜 / 膜タンパク質 / 人工膜 / ナノ空間 / 1分子計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
膜タンパク質の機能を1分子で定量的に評価することは、重要かつ困難な課題である。本研究は、膜タンパク質機能を計測する新しい方法論を創出することを目的として、ガラス基板と高分子エラストマー(ポリジメチルシロキサン:PDMS)にはさまれた厚さ10~100 nmのナノ空間にパターン化人工膜を形成する技術を開発する。そして、モデル膜タンパク質としてロドプシン光受容体を再構成し、機能を超高感度(1分子)で解析する技術を開発する。 平成27年度には、①ナノギャップ構造の作製、②ナノギャップ構造の評価、にかかる技術開発を行い以下の成果を得た。 ①ナノギャップ構造の作製:ポリマー脂質膜と流動性脂質膜からなるパターン化人工膜をガラス基板表面に作製し、ポリマー脂質膜の表面に原子移動ラジカル重合 (ATRP) を利用した表面開始ラジカル重合法により、鎖長が均一で高密度な高分子ブラシを作製した。親水性で生体適合性が高い2-methacryloyloxyethyl phosphoryl choline (MPC)を高分子材料として用い、重合時間により鎖長を制御することに成功した。また、水溶液中でATRP反応を行うことにより、流動性脂質膜と共存するポリマー脂質膜に高分子ブラシを形成した。一方、ナノギャップ構造の作製は、接着層として脂質ベシクル、シリカ微粒子を用いた接合を行った。パターン化人工膜とPDMSとの間に厚さ10~100 nmの空隙(ナノギャップ構造)を作製することに成功した。 ②ナノギャップ構造の評価:高分子ブラシとPDMSの接合は、水溶性蛍光色素を用いて検証した。ギャップ内における水溶性蛍光色素の蛍光強度を測定することでナノギャップ構造の厚さを推定でき、シリカ微粒子の粒径に応じてギャップの厚さを制御できることが示された。 以上の結果は、現在論文投稿中であり、国内外での学会でも発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、ガラス基板と高分子エラストマー(ポリジメチルシロキサン:PDMS)にはさまれた厚さ10~100 nmのナノ空間にパターン化人工膜を形成し、その中で膜タンパク質機能を計測する新しい方法論を創出することを目的としている。 平成27年度には、ポリマー脂質膜と流動性脂質膜からなるパターン化人工膜をガラス基板表面に作製し、ポリマー脂質膜の表面に原子移動ラジカル重合 (ATRP) を利用した表面開始ラジカル重合法により、鎖長が均一で高密度な高分子ブラシを作製した。親水性で生体適合性が高い2-methacryloyloxyethyl phosphoryl choline (MPC)を高分子材料として用い、重合時間により鎖長を制御することに成功した。また、接着層として脂質ベシクル、シリカ微粒子を用いた接合を行った。パターン化人工膜とPDMSとの間に厚さ10~100 nmの空隙(ナノギャップ構造)を作製することに成功した。これらの成果は、現在論文投稿中であり、海外での招待講演でも高く評価されている。今後の課題としては、膜タンパク質再構成法、ナノギャップ構造への導入法、ナノギャップ構造内部での計測法の確立、などが挙げられる。平成28年度はこれらの技術課題に取り組む予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度には、膜タンパク質再構成法、ナノギャップ構造への導入法、ナノギャップ構造内部での計測法の確立、などに取り組む予定である。ナノギャップ構造へ導入されるモデル膜タンパク質として、ロドプシン光受容体(Rh)を用いる。Rhは構造・機能解析が最も進んだGタンパク質共役型受容体(GPCR)であり光刺激で活性化してGタンパク質(トランスデューシン(Gt))に結合する。RhおよびGtはウシガエル視細胞由来のものを精製して用いる(連携研究者より供給される)。申請者は、連携研究者とともにRhの脂質ラフトへの親和性を人工膜で定量的に評価する研究を行っており、パターン化人工膜にRhを再構成する技術は確立している。本研究では、PDMSにサンプル導入孔(Inlet)を設けて、界面活性剤(オクチルグルコシド)に可溶化したRhを添加することで、Rhを流動性脂質膜に再構成する。そして、Rh分子の膜内側方拡散によりナノギャップ構造へ導入する。 ナノギャップ構造における1分子機能計測は、RhとGtを2種類の蛍光色素で標識して同時に1分子観察することで行う。照明には、近赤外光による落射照明および全反射照明を用いる。RhとGtの結合を可視光照射によるRh活性化前後で測定する。また、輝度分布分析を用いてRh二量体形成、単量体・二量体RhとGtとの結合を定量的に評価する。 以上の検討からナノギャップ構造を用いた膜タンパク質機能計測の原理を確立する。
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Causes of Carryover |
ナノギャップ構造開発に必要な物品費が予想よりも少なくすんだため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ナノギャップ構造への膜タンパク質導入のために、ウシガエル、生化学試薬・キット、プラスチック器具類などを購入する予定である。
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Research Products
(6 results)