2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K14489
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
森垣 憲一 神戸大学, バイオシグナル総合研究センター, 准教授 (10358179)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 生体膜 / 膜タンパク質 / ナノ流路 |
Outline of Annual Research Achievements |
生体膜は、多様な脂質と膜タンパク質からなる精密な超分子システムであり、局所的な分子集合状態(例:脂質ラフト)が細胞機能に大きな影響を与えることが分かってきた。しかし、膜タンパク質の機能を分子レベルで定量的に理解することは困難な課題である。本研究は、厚さの極めて薄い接着層を用いてパターン化人工膜とPDMSとを接合し、厚さが10~100 nmで制御されたナノ空間(ナノギャップ構造)を作製する技術を開発した。そして、ナノ空間に閉じ込められた人工膜において膜タンパク質機能を超高感度(1分子)で解析する技術を開発した。接着層として脂質ベシクルもしくはシリカナノ微粒子を用いることで、人工膜とPDMSの間に厚さが100nm以下のナノ空間を形成することに成功した(特願2015-1194, Langmuir. 32: 7958 (2016))。そして、脂質膜とタンパク質との特異的な結合を用いることで、多種類の夾雑分子が存在する溶液から特定のタンパク質分子を選択的にナノギャップ構造に導入した。また、より薄い接着層を用いることでより高いシグナル・ノイズ比で蛍光観察することが可能になった。このことは、ナノ空間において特定分子を高感度に計測する原理を実証する重要な結果である。さらに、膜に結合したタンパク質の側方拡散をナノ空間において1分子蛍光観察することに成功した。一方、現在使用している接着層は脂質膜を材料として用いているので、脂質修飾されたタンパク質が非特異的に吸着してしまうという問題があることが分かった。この問題を解決すべく、現在はシリカ微粒子と生体適合性高分子材料を組み合わせた接着層を開発している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
接着層として脂質ベシクルもしくはシリカナノ微粒子を用いることで、人工膜とPDMSの間に厚さが100nm以下のナノ空間を形成することに成功した。また、脂質膜とタンパク質との特異的な結合を用いることで、多種類の夾雑分子が存在する溶液から特定のタンパク質分子を選択的にナノギャップ構造に導入した。そして、より薄い接着層を用いることで、より高いシグナル・ノイズ比で蛍光観察することが可能になった。このことは、ナノ空間において特定分子を高感度に計測する原理を実証する重要な結果である。さらに、膜に結合したタンパク質の側方拡散をナノ空間において1分子蛍光観察することに成功した。一方、現在使用している接着層は脂質膜を材料として用いているので、脂質修飾されたタンパク質が非特異的に吸着してしまうという問題があることが分かった。この問題を解決すべく、現在はシリカ微粒子と生体適合性ポリマー材料を組み合わせた接着層を開発している。また、膜タンパク質の導入効率の改善などが今後の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度には、膜タンパク質のナノギャップ構造への導入、ナノギャップ構造内部での計測などに引き続き取り組む。モデル膜タンパク質として、ロドプシン光受容体(Rh)を用いる。RhおよびGタンパク質(トランスデューシン(Gt))はウシガエル視細胞由来のものを精製して用いる(連携研究者より供給される)。申請者は、連携研究者とともにRhの脂質ラフトへの親和性を人工膜で定量的に評価する研究を行っており、パターン化人工膜にRhを再構成する技術は確立している。本研究では、PDMSにサンプル導入孔(Inlet)を設けて、界面活性剤(オクチルグルコシド)に可溶化したRhを添加することで、Rhを流動性脂質膜に再構成する。そして、Rh分子の膜内側方拡散によりナノギャップ構造へ導入する。 接着層として、現在使用している脂質膜をベースとした材料(ベシクル、脂質で被覆されたシリカ微粒子)ではなく、生体適合性ポリマー材料を用いることで、脂質修飾されたタンパク質(例:Gt)が接着層に非特異的に吸着することを防ぐ。 ナノギャップ構造における1分子機能計測は、RhとGtを1分子観察することで行う。照明には、近赤外光による落射照明および全反射照明を用いる。RhとGtの結合を可視光照射によるRh活性化前後で測定する。 以上の検討からナノギャップ構造を用いた膜タンパク質機能計測の原理を確立する。
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Causes of Carryover |
ナノギャップ構造を作製するためにパターン化人工膜とPDMSとを接合する接着層として、これまで使用していた脂質ベースの材料ではなく、より安定性が高いシリカ微粒子と生体適合性高分子とを組み合わせた材料を使う方式に変更した。そのために、研究の完成に予定よりも多くの時間がかかり、検討を継続する経費が必要となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰り越された予算は、原則、消耗品に使用する。購入を予定している物品としては、人工膜の基板(カバーガラス)、PDMS作製のためエラストマー樹脂、脂質、高分子ブラシ原料、蛍光色素、その他一般試薬、、ガラス器具、ディスポーザルなプラスチック器具類などを予定している。また、ロドプシンを取得するため、生化学関連の試薬・キット類を購入する予定である。
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[Journal Article] The role of the Prod1 membrane anchor in newt limb regeneration2017
Author(s)
Nomura, K., Tanimoto, Y., Hayashi, F., Harada, E., Shan, X.-Y., Shionyu, M., Hijikata, A., Shirai, T., Morigaki, K., Shimamoto, K.
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Journal Title
Angew. Chem. Int. Ed.
Volume: 56
Pages: 270-274
DOI
Peer Reviewed
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