2015 Fiscal Year Research-status Report
分泌顆粒局在型カルシウムチャネルORAI2による新たな分泌制御機構の解析
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15K14495
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
鈴木 亮 名古屋市立大学, 薬学研究科(研究院), 講師 (00344458)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | マスト細胞 / 分泌顆粒 / 開口放出 / カルシウムチャネル / カルシウムイオン / アレルギー |
Outline of Annual Research Achievements |
アレルギー疾患には、マスト細胞が中心的な役割を担っており、抗原によってマスト細胞が活性化されると、分泌顆粒内の炎症性メディエータが放出され、アレルギー反応が惹起される。顆粒内炎症性メディエータの放出メカニズムの解明は、アレルギー疾患の原因を追究する上で重要である。我々の研究から、これまで細胞膜に存在していると考えられていたカルシウム遊離活性化Ca2+チャネル(ORAIファミリー)のサブタイプの1つであるORAI2が、マスト細胞において分泌顆粒に局在し分泌反応を制御していることが明らかになった。そこで、分泌顆粒局在型Ca2+チャネルORAI2による分泌メカニズムの解明を試みた。具体的には、以下の項目について追究した。(1)分泌反応における分泌顆粒局在型Ca2+チャネルORAI2の機能解明のため、マスト細胞の刺激応答に伴うORAI2の局在変化を観察した。その結果、抗原によって活性化されたマスト細胞では、分泌顆粒膜と細胞膜の膜融合に伴い、ORAI2の局在が細胞膜に変化していることが分かった。(2)分泌顆粒内Ca2+動態測定のため、Ca2+バイオセンサー(GCaMPなど)と分泌顆粒や小胞体に局在させるためのキメラ遺伝子の作製とイメージング解析を実施した。本項目では、当初予定した方法ではCa2+バイオセンサーを分泌顆粒に局在させることが困難であったため、新たな候補分子として分泌顆粒局在蛋白質VAMPとGCaMPを融合させることで、分泌顆粒への局在が可能になった。(3)顆粒トラフィッキングにおけるORAI2の機能を追究するため、細胞骨格蛋白質とORAI2の相互作用の追究したところ、マスト細胞の刺激応答に伴う相互作用の増強が観察された。(4)ヒトマスト細胞株を用いた解析では、ORAI2はヒトマスト細胞においても分泌顆粒に局在していることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの当研究室の研究成果から、Human Growth Hormone(hGH)のSignal Sequence(ss)部分を付加したキメラ遺伝子は、目的蛋白質を分泌顆粒に局在させることに成功していた。そこで本研究では、分泌顆粒内Ca2+測定するためCa2+バイオセンサー(GCaMPなど)とhGH-ssのキメラ遺伝子を作製し、分泌顆粒に局在するCa2+バイオセンサーによって、分泌顆粒でのCa2+動態を測定する予定であった。しかし、Ca2+バイオセンサーの場合には、hGH-ssのシステムが十分機能しなかったため、別の分泌顆粒局在蛋白質を用いてCa2+バイオセンサーを分泌顆粒に局在させることに成功した。そのため、現時点では細胞レベルでの解析は十分には行えていないが、進捗状況(到達状況)としては概ね計画通りである。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、これまでの成果を基盤にさらに研究を展開する。そのため以下の項目について中心的に研究を遂行する。(1)これまで本研究により構築したオルガネラ局在型Ca2+バイオセンサー(分泌顆粒や小胞体)を用いて、さらに詳細なオルガネラ(分泌顆粒や小胞体)でのCa2+動態を追究する。特に、ORAI2による分泌顆粒でのCa2+制御機構を明らかにする。そして、分泌顆粒でのCa2+動態が分泌反応における役割を明らかにする。(2)分泌顆粒局在ORAI2が、分泌顆粒のトラフィッキングや分泌顆粒膜と膜融合を制御しているのか、その分子メカニズムを明らかにする。そのため細胞骨格(Tubulin)と相互作用を介した分泌顆粒の移動過程や顆粒-細胞膜融合における、分泌機能蛋白質SNARE(Soluble N-ethylmaleimide-sensitive factor attachment protein receptors)とORAI2の相互作用について明らかにする。(3)さらに脱顆粒反応だけでなく、サイトカイン(TNFalpha;など)/ケモカイン(CCL2など)の選択的な分泌反応における顆粒局在型ORAI2の機能を明らかにするため、ORAI2ノックダウン細胞に加え、CRISPR/Cas9などのゲノム編集システムを用いたORAI2ノックアウト細胞の樹立を行い、サイトカイン/ケモカインの分泌反応におけるORAI2の詳細な機能を明らかにする。
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Causes of Carryover |
当該年度の残予算に関しては、各種バイオセンサーの作製を中心的に行ったため、ベクターの購入や生化学的研究に用いた抗体が主な支出であった。そのため現有する試薬などで対応が可能であった。また、当初予定していた細胞を用いた研究に使用するはずであった予算(細胞培養用培地、血清、サイトカイン等)に若干の余裕が生じたため、当初の予定金額と比較して少ない予算で研究が遂行できたためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度は、主に分泌顆粒局在型ORAI2の機能を細胞レベルで解析するための可視化解析や生化学的研究を行う計画のため多種の抗体(細胞骨格蛋白質、SNARE蛋白質など)や多くの細胞を培養(細胞培養用培地、血清、サイトカイン等)する必要があり、また分泌反応を定量するキットを購入のため、前年度に未執行であった予算を使用する計画である。当初の計画通り、消耗品及び学会等での情報収集のための旅費が主な使徒である。
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[Journal Article] symmetry of STAT action in driving IL-27 and IL-6 transcriptional outputs and cytokine specificity2015
Author(s)
Hirahara K., Onodera A., Villarino A., Bonelli M., Sciumè G., Laurence A, Sun H.-W., Brooks SR., Vahedi G., Shih H.-Y., Gutierrez-Cruz G., Iwata S., Suzuki R., Mikami Y., Okamoto Y., Nakayama T., Holland S., Hunter C.A., Kanno Y., O’Shea JJ.
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Journal Title
Immunity
Volume: 42
Pages: 877 -889
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] アレルゲン親和性が制御するマスト細胞活性化機構の解明2015
Author(s)
鈴木 亮, Sarah Leach, Wenhua Liu, Evelyn Ralston, Jörg Scheffel, Weiguo Zhang, Clifford A. Lowell, 平嶋尚英, Juan Rivera
Organizer
第64回日本アレルギー学会学術大会
Place of Presentation
東京
Year and Date
2015-05-26 – 2015-05-28