2015 Fiscal Year Research-status Report
In vitro再構成による運動性細胞の極性獲得機構の解明
Project/Area Number |
15K14497
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
宮崎 牧人 早稲田大学, 理工学術院, 助教 (40609236)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 生物物理 / 細胞運動 / 分子モーター / アクトミオシン / 自発的対称性の破れ / 葉状仮足 |
Outline of Annual Research Achievements |
ケラトサイト等の運動性細胞はアクチン繊維の重合で膜を押し広げ、平板状突起(lamellipodia)を“前”に出すことで移動する。移動中の細胞は、アクチン繊維が膜を押す力の反作用とミオシンによる細胞“後方”への牽引力で、細胞の前から後に向かってアクチン繊維の流れ(retrograde flow)が維持されるために一方向に動ける。しかし基質に接着した直後の細胞は円盤状の形で、アクチン流動も細胞の端から中心に向かう点対称性を示すため、細胞には前後がない。本研究の目的は、無極性の細胞が如何にして前後を決めて一方向に動き出せるのか、その仕組みを解くことである。 初年度は、細胞質(アフリカツメガエルの卵)抽出液を液滴に封入した人工細胞系を構築し、液滴辺縁から液滴中央へのアクチンの定常的な流れを発生させることに成功した。さらに、液滴のサイズを小さくしていくと、アクチンの流れが空間的に非対称になる現象を発見した。各種阻害剤を用いてアクチン重合能を変調させると、対称-非対称転移が生じる液滴の直径が変化したことから、アクチン重合の活性度がアクチン流動の非対称性を制御していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
安定した品質の細胞質抽出液を調製する技術を習得し、細胞質抽出液を封入した液滴内で界面から中央部へのアクチン流動を再構成することに成功した。続いて、様々な大きさの液滴に細胞質抽出液を封入してアクチン流動を観察したところ、液滴サイズが小さくなるとアクチン流動が非対称化する現象を発見した。さらに、アクチン重合能を各種阻害剤で変化させ、アクチン重合能とアクチン流動の非対称性の関係を調べることができた。ミオシン活性とアクチン流動の非対称性の関係性までは調査出来なかったが、それ以外は計画通りに実験を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
アクチン流動にはミオシンも関与しているはずである。そこで、アクチン重合活性とアクチン流動の非対称性の関係を調べたときと同様に、各種阻害剤を用いてミオシン活性を変調させ、ミオシンの収縮力とアクチン流動の非対称性との関係を明らかにする。続いて、アクチン重合とミオシンの活性度をモデルパラメータとして、現象を再現できる数理モデルを構築し、モデルから予想される現象を実際に実験で確かめることで、アクチン流動が非対称化する仕組みを物理で理解することを目指す。
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Causes of Carryover |
アクトミオシン活性を生かした状態でカエルの卵抽出液を調製する技術の確立に、予定よりも時間を要したため、ミオシンの阻害実験は翌年度に持ち越しとなったから。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ミオシンの各種阻害剤を購入し、阻害剤でミオシン活性を変調させることで、ミオシンの収縮力とアクチン流動の非対称性との関係を明らかにする。
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