2015 Fiscal Year Research-status Report
細胞のくびれ運動を駆動する収縮環と細胞膜の相互作用メカニズムの解明
Project/Area Number |
15K14501
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
上原 亮太 北海道大学, 創成研究機構, 特任助教 (20580020)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 細胞質分裂 / 細胞骨格 / 細胞膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞周期の最後、細胞膜のくびれ運動により細胞が二分される「細胞質分裂」は、生命継承に必須の現象である。くびれ運動は、分裂位置に現れる「収縮環」によって駆動されるが、構成要素の激しい分子交換と解体を伴って収縮する収縮環が、細胞膜と継続的な相互作用を維持しながら、細胞膜に変形力を伝搬する仕組みは不明である。その要因は、収縮環と細胞膜を係留する分子装置の実体が明らかでないことにある。これまでに細胞膜と細胞骨格を係留するリンカータンパク質が数多く同定されてきたが、それらが協調して細胞質分裂の制御に関わる仕組みは不明である。 本研究では、収縮環係留因子を網羅的に同定し、それらの動態や機能を比較解析することで、収縮環と細胞膜の間で起こる細胞装置間相互作用の実態を明らかにすることを目指す。当該年度は、十数種の膜タンパク質のGFP融合遺伝子を作成し、HeLa細胞のくびれ位置に局在した因子について、高分解能生細胞観察や蛍光褪色後回復法(FRAP)を用いて、膜や細胞骨格への結合性や細胞内動態の比較解析を行った。これらのリンカー因子はいずれも通常収縮環と細胞膜の間に存在したが、興味深いことに、人為的擾乱によって細胞膜と収縮環を物理的に乖離させると、細胞膜側もしくは収縮環側に残留するグループに二分された。また、これらの中には、くびれ位置での分子交換速度が極端に遅いもの、逆に収縮環構成因子よりもはるかに速い分子交換速度を示すものが存在していることも明らかになった。さらにRNAiによる機能阻害実験で、リンカー因子ごとに分裂細胞の膜動態や収縮環収縮における役割が大きく異なることがわかった。上記の結果から、くびれ位置に数多く存在するリンカータンパク質について、収縮環や細胞膜への結合性の点において多大な多様性が存在しており、分裂の進行における機能に関しても著しい機能分化が起こっていることが示唆される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究協力者として当該年度から本研究に参加している大学院生に関して、細胞生物学実験の基礎的なトレーニングなどの観点から顕微鏡を多用した実験を主に推進することが望ましいと判断されたため、当初1年目に予定していたプロテオミクス解析を後回しにして、先に(当初2年目に予定していた)生細胞を用いた高分解能顕微鏡観察や細胞内分子動態解析を行うことにした。これにより、プロテオミクスを用いた解析については結果が出ておらず、遅れが生じているが、一方で、当初2年目に計画していた生細胞観察については概ね順調に研究が進行したため、次年度は当初1年目に予定していた実験に十分な時間を費やせると考えられる。 当該年度の顕著な成果として、GFPタギング法を用いた細胞内局在解析によって、収縮環と細胞膜を係留する因子を数種類特定し、蛍光褪色後回復法や、高解像生細胞イメージングによって、それらの細胞内分子動態や局在依存性、くびれ運動における機能に著しい多様性が存在することを明らかにすることができた。これらは、当初の計画で想定していなかった発見であり、収縮環と細胞膜の複雑なオルガネラ間相互作用の分子機構を理解する上で重要な知見を与えるものであると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度は、前年度手薄になったプロテオミクスによる未知の収縮環係留因子の網羅的解析に本格的に着手する。当初の計画通りに、レクチンを用いて、分裂位置特異的な糖鎖修飾を足がかりに相互作用因子を同定するアプローチに加えて、前年度に同定したリンカー因子の相互作用因子を免疫沈降法によって単離精製するアプローチも新規に追加して、未知の収縮環係留分子装置を同定したい。 また、前年度、予想外の発見として、収縮環と細胞膜の係留に関わる数種類の膜表在性タンパク質に関して、それらの収縮環・細胞膜結合性や細胞内分子動態に著しい多様性が備わっていることがわかってきた。そこでこの発見を受け、本年度は、それらの因子の収縮環および細胞膜結合部位を特定した上で、因子間でそれらの部位を交換した変異体を作成し、各因子の細胞内動態や機能にどのような影響がでるかを詳細に解析したい。さらに、micropippet aspiration法などの細胞の力学計測法を導入し、各因子の機能欠損時の分裂細胞の力学的性質の変化を定量解析したい。これらのアプロートを新規にとりいれることで、前年度明らかになった分子動態の多様性が、実際の細胞分裂の制御においてどのように機能的な重要性を持っているかを明らかにしていきたい。
|
-
[Journal Article] Augmin shapes the anaphase spindle for efficient cytokinetic furrow ingression and abscission.2016
Author(s)
Uehara, R., Kamasaki, T., Hiruma, S., Poser, I., Yoda, K., Yajima, J., Gerlich, D.W., and Goshima, G.
-
Journal Title
Molecular Biology of the Cell
Volume: 27
Pages: 812-827
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
-