2015 Fiscal Year Research-status Report
微小管動態多様性の進化プロセス解明をめざした線虫モデル実験系の確立
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15K14503
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
杉本 亜砂子 東北大学, 生命科学研究科, 教授 (80281715)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 進化細胞生物学 / 線虫 / 微小管 / CRISPR/Cas9 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では微小管動態の進化プロセスの解明をめざし、線虫Caenorhabditis elegansとその近縁種であるPristionchus pacificusを用い、『進化細胞生物学 (Evolutionary Cell Biology)』という新しい視点に立った実験系を構築することをめざす。具体的には、これら2種の線虫間のゲノム比較解析、遺伝子操作、および、高分解能ライブイメージングを統合的に用いて、微小管関連因子のゲノム配列上の変化と微小管動態の多様性(さらには細胞動態の多様性)獲得との関連性を解明するための研究基盤を確立する。H27年度は、C. elegansとP. pacificusの受精直後から第一分裂までの細胞動態に着目して解析した。その結果、前核融合や紡錘体形成およびその動きなど、微小管が関与する細胞内現象に顕著な違いが見られた。微小管を免疫染色によって観察した結果、これらの2つの線虫胚においては、微小管の形成・消失時期が異なっていることが示された。さらに、遺伝子銃によるP. pacificusの形質転換法をはじめて確立し、GFP標識γ-チューブリン発現株を構築した。その観察により、中心体へのγ-チューブリンの集積時期がC. elegansとP. pacificusでずれていることが明らかになった。以上より、微小管形成核であるγ-チューブリンの動態の違いが微小管動態の違いに寄与していることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで困難であった、P. pacificusの形質転換法を確立し、遺伝子操作を可能とした。この技術を用いて、GFP標識γ-チューブリン発現P. pacificus株を作製し、C. elegansとP. pacificusの初期胚における微小管制御の一端を明らかにすることができた。初期発生における微小管動態の相違点を複数見いだしており、ほぼ計画通り、微小管動態進化の解析が進行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
遺伝子銃による形質転換法は確立したが、さらに遺伝子操作を容易にするために、CRISPR/Cas9法の確立をめざす。CRISPR/Cas9法によるゲノム編集により、微小管動態制御に関わる遺伝子の変異体を作成し、さらに微小管動態進化の解明を進める。
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Research Products
(3 results)