2016 Fiscal Year Research-status Report
セパレースセンサーを用いた中心子複製ライセンシング機構の解明
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15K14508
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
花房 洋 名古屋大学, 理学研究科, 准教授 (00345844)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | LRRK1 / 中心体 / 母娘中心小体 |
Outline of Annual Research Achievements |
中心体は一対の母娘中心小体からなり、細胞内の微小管形成中心として重要な働きをしている。中心小体は細胞周期ごとに一度だけS期に複製される。中心小体の複製が過剰に起こると中心体数の異常につながり、細胞分裂(M)期に染色体分配が不安定化することが知られている。このため中心小体の複製は厳密に制御されている。これまでの研究から、M期中期から後期にかけ母娘中心小体が解離し、これがS期複製のライセンシングシグナルとして機能していることが明らかとなってきた。実際、母娘中心小体の解離が早まった細胞では、中心小体の複製が過剰に起きる。母娘中心小体は、染色体同様コヒーシンによってタイトな結合が維持されており、プロテアーゼであるセパレースがコヒーシンを分解することで解離を引き起こすと考えられている。コヒーシンの切断配列の両側にGFP(緑色に発色)とmCherry(赤色に発色)の発色団を持ち、N末端に中心体局在ドメインであるPACTドメインを融合したセパレースセンサーを用いると、中心体特異的なセパレースの活性を、蛍光の変化で観察することができる。本研究ではこの系を用いて、中心小体解離(ライセンシングシグナル)に重要な遺伝子の同定とその分子機構の解析を行った。昨年度までの解析から、LRRK1を恒常的に活性化させると、母娘中心小体の解離が早まり、中心体数が過剰になることを明らかにした。またLRRK1をノックダウンした細胞では、母娘中心小体の解離が遅延する。このようにLRRK1はキナーゼ活性依存的に母娘中心小体の解離を制御していることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでLRRK1が母娘中心小体をキナーゼ活性依存的に制御していることを明らかにした。このように中心体複製におけるLRRK1の重要性は確認できた。さらにセパレースセンサーを用いた実験から、LRRK1をノックダウンした細胞でセパレースの活性が遅延するとの結果を得ている。研究は期待通りに進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は以下の点に焦点を絞り解析を行っていく予定である。 (1)LRRK1の下流で母娘中心小体解離に機能する分子の同定 LRRK1がキナーゼ活性依存的に母娘中心小体の解離を制御していることを明らかにした。そこで前年度に引き続きLRRK1の標的分子の同定を行う。LRRK1の標的分子の候補として、ダイニン結合分子NDE1及びNDEL1を同定している。今後はLRRK1によるリン酸化部位を、質量分析を用いて探索し、LRRK1によるリン酸化の役割を解明していく予定である。 (2)PP5によるLRRK1の脱リン酸化・不活性化の意義 セリンスレオニンフォスファターゼPP5は、LRRK1のキナーゼドメインに存在するスレオニンを脱リン酸化することで、LRRK1の活性を負に制御していることを見出していた。またPP5をノックダウンした細胞では、母娘中心小体の解離が早まり、中心体数が過剰になる。そこでPP5がLRRK1の活性化を制御することで、母娘中心小体の解離を制御していないか引き続き検討する。
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Causes of Carryover |
中心小体複製ライセンシング機構を解明するため、複製に重要なLRRK1の標的分子及びセパレースセンサーに影響を与える分子を探索したところ、予想外に多くの分子が同定できた。このため2次スクリーニングによる絞り込みを行う必要が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰越金を用いて、NDE1、NDEL1を除く候補分子について中心体に局在が見られるか(現在Flagタグのついた遺伝子を作成済みである)、siRNAによるノックダウンで中心体数に変化が見られるか検討する。
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