2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K14512
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
森山 昭彦 名古屋市立大学, その他の研究科, 教授 (50145744)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 美恵子 名古屋市立大学, その他の研究科, 研究員 (90624700)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | コブラサイトトキシン / リン脂質プローブ / 脂質結合タンパク |
Outline of Annual Research Achievements |
コブラサイトトキシン(CTX)はコブラ毒素タンパク質の50%以上をしめる主要成分であり、種々の細胞に対して毒性を示す。この細胞溶解並びに溶血活性の分子機構は明確には解明されていない。既に精製してある10種のコブラCTXのうち主要5種(CTX2, CTX7~10)について、全アミノ酸配列を決定し、細胞溶解並びに溶血活性の関係を調べた。溶血活性の強いP型に属するCTX9とCTX10は1アミノ酸置換の関係にあり、ほぼ同じ強い活性を示した。他方、溶血活性の弱いS型3種のCTXの中で、CTX2は弱い活性を示したが、お互いに1アミノ酸置換の関係にあるCTX7とCTX8は、ほぼ同程度の強い活性を示した。各種リン脂質を固相化した簡易リン脂質親和性測定法を開発し、CTX2,CTX7, CTX9のリン脂質に対する相対親和性を測定したところ、いずれもホスファチジルセリンに強い親和性を示した。一次構造とリン脂質親和性の関係から、S型では、ループIIに位置するLys30が、強い活性に重要である事が示唆された。また、クローニングした12種のCTX cDNAを含め51種のCTX cDNAの塩基配列アラインメントから、コドン毎の非相同置換/相同置換の比を調べたところ、CTXのループIIに対応するコドン領域が加速進化を受けている事が示された。同時に、リン脂質と相互作用するアミノ酸残基、CTXのコア構造を安定化させているアミノ酸残基に対応するコドンは保存的であった。これらの結果は、CBP Part C, 174, 158-164 (2016)に掲載された。新年度は、これらの結果を利用して、毒性を持たないリコンビナントCTX分子を作製する。また、CTX分子のリン脂質親和性を評価するために必要なリン脂質親和性測定法の改良を試みる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度の成果として、リン脂質結合に関与する領域と生体膜傷害活性を担う領域が、サイトトキシン(CTX)分子上の異なる領域に存在することを明らかにした。さらに、CTXの溶血活性の強弱は、リン脂質結合活性の強弱ではなく、生体膜傷害活性の強弱に依存していることを示した。この知見に基づいて、より確実性を持って細胞傷害活性を持たないリコンビナントCTXを設計することが可能となった。そこで、当初の計画では、最も毒性の強いCTX7を基本として、毒性を持たずリン脂質親和性を有する変異タンパク質を作製する予定であったが、最も毒性の弱いCTX2を基本として、リコンビナントタンパク質を設計することに変更した。 本研究の第1目的は、ホスファチジルセリン(PS)に特異的に結合するタンパク分子の創出である。リン脂質の中でPSにして特異的であることを評価する測定系が必要である。初年度に作成した簡易リン脂質親和性測定法は、半定量的方法であり、解離定数(Kd)を推定することができない。そこで、この測定法を改良する必要である。問題点は、固相化されたリン脂質の有効量の推定と、そのリン脂質に吸着されたCTXの定量化であるので、プレート材質の検討、ホスホリパーゼとCTXの抗体の利用などの検討を現在行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度開発したリン脂質結合親和性測定法は半定量的測定法のため、発現させたリコンビナントCTXのリン脂質親和性を定量的に測定することができない。そこで、まず、リン脂質固相化条件の改良を行う。具体的には、プレートの材質を見直し、ホスホリパーゼを利用して、固相化されたリン脂質の有効量の定量を行う。ついで、固相化リン脂質に結合したCTXの信頼できる定量法を開発する。今年度の成果として、CTXはその生理活性にかかわらず、分子のカルボキシル末端側の構造が保存されていることが示された。そこで、この領域を元に抗体を作製し、リコンビナントを含めCTX変異体の分子種にかかわらず定量可能とする酵素抗体法を開発する。これにより、リン脂質親和性の定量が精密化できると期待される。 昨年度の成果から、CTX2の毒性が弱いことと、ループII領域が膜傷害活性に関わっていることが示されたので、これらの知見をもとに、当初の予定であったCTX7ではなく、CTX2の遺伝子配列を元に、毒性を持たないリコンビナントCTX分子の作成を試みる。えられたリコンビナントCTXの溶血活性とリン脂質親和性を測定し、ホスファチジルセリン特異的結合タンパク質としての性質を明らかにする。
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Causes of Carryover |
初年度の研究によりCTX分子の機能部位に関する新たな知見が得られ、毒性を示さずリン脂質結合能を持つリコンビナントコブラCTXのアミノ酸配列を再設計する必要が生じた。そのため、初年度に予定していたリコンビナントCTXの作製計画を次年度に行うこととした。また、初年度に開発したCTX分子のリン脂質親和性を定量化するための測定法が半定量的測定法であり、各種リン脂質親和性を定量的に比較するためには、さらに改良する必要が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
CTX2の塩基配列をもとに、毒性を示さずリン脂質結合能を持つリコンビナントコブラCTXの作成を試みる。 また、CTX特異抗体を作成し、初年度に開発したCTX分子のリン脂質親和性の測定法に定量性を持たせるように改良する。 この測定法を用いて、リコンビナントCTXのリン脂質結合特異性を評価する。これらの結果を総合して研究をまとめる。
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Research Products
(2 results)
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[Journal Article] Comparison of the primary structures, cytotoxicities, and affinities to phospholipids of five kinds of cytotoxins from the venom of Indian cobra, Naja naja.2016
Author(s)
Suzuki-Matsubara, M., Athauda, S. B. P., Suzuki, Y., Matsubara, K. and Akihiko Moriyama, A.
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Journal Title
Comparative Biochemistry and Physiology, Part C
Volume: 179
Pages: 158-164
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
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