2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K14512
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
森山 昭彦 名古屋市立大学, 大学院システム自然科学研究科, 教授 (50145744)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 美恵子 名古屋市立大学, 大学院システム自然科学研究科, 研究員 (90624700)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | サイトトキシン / リン脂質結合 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度の研究により、CTX分子でホスファチジルセリン結合に関与しているアミノ酸残基と毒性(膜障害活性)に関与しているアミノ酸残基がCTX分子上の別々の領域に推定された。この知見をもとに、毒性が弱まる(あるいはなくなる)と期待される変異を導入したCTXの発現ベクターを構築した。これらのベクターでトランスフォームした大腸菌は、生育しないか、発育が悪いかのいずれかであった。前者の場合は、リコンビナントCTXの大腸菌に対する毒性によるのものと推定され、リコンビナントCTXは得られなかった。後者の場合、リコンビナントCTXに毒性がない、または低いと推定されたが、CTXが封入体となっていたため、これを精製しリフォールディングを試みた。NaCl, KCl、ショ糖、ポリエチレングリコールを含むGSSG/GSH酸化還元緩衝液の条件でリフォールディングしたリコンビナント CTXは、一部で赤血球凝集反応を示す例が見られたが、溶血は引き起こさなかった。我々は、CTXの結合を、リン脂質を固相化した96穴プレートを用いて測定していた。しかし、固相化の条件でプレートが一部溶解するため再現性が低下する事、また遊離CTXの測定に溶血活性を指標としていたために、溶血活性をもたないリコンビナントCTXを定量することが困難であった。固相化については、プレートの材質と溶媒を変更することにより、再現性を向上させることが可能となった。次に、遊離のCTX量を直接感度良く定量できるよう酵素標識抗体法作成のためにCTX分子で保存性の高いカルボキシル末端側のペプチドを合成し、抗体を作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の第1の目的は、ホスファチジルセリン(PS)に特異的に結合するタンパク分子の創出である。 発現でえられたCTXが封入体のため、可溶化とリフォールディングしなければ活性がえられないが、効率的なリフォールディング条件が見つからなかった。CTXは60アミノ酸よりなる小分子であるにもかかわらず4つのシスチン橋を含んでいることと、精製したCTXに含まれる不純物が関係していると思われる。 また、作成したリコンビナントCTXのリン脂質に対する特異性と親和性の程度を評価する必要がある。従来使用していたリン脂質親和性の測定法は半定量的方法であったので、プレートの材質と溶剤の組み合わせを改良し再現性のあるリン脂質固相化条件を確立した。しかしながら、リン脂質は両親媒性であるため、固相化したリン脂質のすべてがその極性頭部を水相に露出させている訳ではなく、固相化したリン脂質の有効濃度が決まらず、リン脂質に対する親和性を正確に測定する事ができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
リン脂質との結合特異性、解離定数などを調べるために、信頼性、再現性の高いリン脂質親和性測定法の確立を試みる。―――リン脂質の固相化条件は確立できたので、次の課題として、固相化後に、有効な(CTXが水相から接近可能な)リン脂質量を定量する必要がある。ホスホリパーゼDが洗剤非存在化では脂質内部のリン脂質頭部を加水分解できないことを利用し、有効リン脂質頭部の定量を試みる。また、CTXのカルボキシル末端よりの配列をもつ合成ペプチドに対して作製された抗体とHRP標識抗ウサギIgG(H + L)抗体を組み合わせ、酵素標識抗体法を確立する。これにより、リン脂質親和性の定量的測定が精密化できると期待される。次に、昨年度封入体として作製したリコンビナントCTXのリフォールディング条件を改良し、活性型の回収率の向上を試みる。リフォールディングの効率は、GSSG/GSH酸化還元緩衝液の利用と、透析法、希釈法、ゲルろ過法の組み合わせを試みる。このようにしてえられた活性型リコンビナントCTXのリン脂質結合活性を、上記の用にして改良した測定法を用いて定量的に解析する。
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Causes of Carryover |
発現させたリコンビナントCTXの効率の良いリフォールディング条件が決定できなかった。また、リン脂質結合能測定の際に遊離CTX量を正確に定量する必要が生じ、計画を変更して抗体を利用した測定系を構築する事とした。この抗体作成に時間がかかったため、計画全体が遅れが生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
酵素標識抗体法の作成に必要な試薬類と、十分量の活性型リコンビナントCTXの調製に必要な試薬類の購入、さらに、成果がまとまれば、学会発表用旅費に助成金を使用する予定である。
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