2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K14537
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
寺島 一郎 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (40211388)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | アポプラスト / シグナル伝達 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに、ゲランガムを用いて剥離表皮を長時間にわたって観察するシステムを開発している。これを用いて、剥離表皮と、剥離表皮を葉肉に載せたものについて、それらの気孔の光やCO2への応答を比較した。表皮を葉肉に載せると、光への応答(特に赤色光)やCO2への応答が著しく促進された。これらは、葉肉から孔辺細胞へのシグナルの存在を示すものである(2013年に論文として公表)。 しかし、表皮を直接ゲルに載せた場合と葉肉に載せた場合とでは、表皮が接する溶液の組成やpHが異なる。このアーティファクトをさけるべく、ゲルの緩衝作用やCa2+の濃度の影響を詳細に検討し、バッファーの組成に影響を受けるアーティファクトのない実験系を構築した。それは、たとえば暗黒処理した植物体から得た剥離表皮を、光強度・CO2濃度などを制御した一定環境においた葉の葉肉に載せて、表皮の気孔の挙動を比較するというものである。この系を用いた実験により、葉肉シグナルの存在が決定的に証明された。 また、剥離表皮と葉肉との間に穴の空いたセロファンとポリエチレンフィルムを挟む実験により、葉肉シグナルはセロファンを通過する水溶性の分子であることが示唆されている(Fujita et al. 2013)。本年度は、透過可能な分子量上限がある透析膜を用いて、気孔開口シグナルと気孔閉鎖シグナルの分子量の大きさを決定した。 シグナルの候補物質についても検討した。 新しい実験系を用いて得られた結果および透析膜を用いた結果を原著論文にまとめ、現在推敲中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2013年に公表した論文は、よく引用されているが、表皮を直接ゲルに載せた場合と、葉肉に載せた場合とでは、表皮が接する溶液の組成やpHが異なるという欠点があった。このアーティファクトをさけるべく、ゲルの緩衝作用やCa2+の濃度の影響を詳細に検討し、バッファーの組成に影響を受けるアーティファクトのない実験系を構築した。このように、細心の注意を払いつつ、研究は順調に進展している
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Strategy for Future Research Activity |
葉肉アポプラストシグナルは、葉肉組織から表皮に移動することが示された。そこで、表皮の代わりに透析フィルムまたは、薄くスライスしたゲルを置き、葉肉組織から移動してきた葉肉アポプラストシグナルを捕捉する。この濾紙もしくはゲルに剥離表皮を置き、葉肉シグナルの有無を気孔開閉によってバイオアッセイし、活性のある各分が得られる条件を詳細に決定する。スペーサーに透析膜を用いることで、予め分子量を制限した状態で、バイオアッセイを行うことが可能であり、引き続き行う代謝物解析でターゲットとなる分子を絞り込む。
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Causes of Carryover |
H27年度は予備実験を続けたため、研究費の使用を抑えることができ、研究の取りまとめを行い人件費も必要とするH28年度に繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
予備実験によりほぼ本実験の方針が固まった。H28年度は本実験を遂行する。人権費と一般試薬等の消耗品費の支出が見込まれる。
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