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2016 Fiscal Year Research-status Report

二本目の花粉管誘引を利用する多精拒否機構の解明

Research Project

Project/Area Number 15K14541
Research InstitutionYokohama City University

Principal Investigator

丸山 大輔  横浜市立大学, 木原生物学研究所, 助教 (80724111)

Project Period (FY) 2015-04-01 – 2018-03-31
Keywords助細胞 / 花粉管 / 多精拒否 / 重複受精
Outline of Annual Research Achievements

動物の受精では,1つの卵に対して複数個の精子が受精することを防ぎ,雄と雌が1:1で受精するように保証する多精拒否の仕組みが存在する.被子植物では2つの精細胞が1本の花粉管によって運ばれて,それぞれが卵細胞と中央細胞と受精する.このように必要十分の数の精細胞しか受精の場に供給されないため,動物に比べ多精が生じにくいシステムとなっている.しかし,近年,精細胞を2個以上形成するシロイヌナズナ変異体を用いた実験により,被子植物においても多精拒否が存在することがわかってきた.エチレンシグナル経路を欠損するシロイヌナズナ変異体(ein2-5)は,重複受精が完了した後も二本目の花粉管を高頻度に誘引するため,合計4個の精細胞が卵細胞へと供給される.そこで,多精を高頻度に示す変異体を順遺伝学的手法によって分離・同定することで,多精拒否の仕組みを解明できると考えた.平成27年度では,ein2-5変異体の胚珠において予想された多精の状況が生じてはいないことが明らかとなった.つまり,助細胞胚乳融合によって精細胞の放出先の切り替えがおこり, 2本目の花粉管によって運ばれてきた精細胞は卵細胞と中央細胞の間の受精領域ではなくて胚乳へ送られていたことが明らかとなった.この現象は精細胞のポジショニングを通じた被子植物の多精拒否戦略を示す興味深いものであり,現在論文を投稿準備中である.平成28年度では受精後に助細胞胚乳融合を引き起こさない条件を探るため,様々な阻害剤の影響を明らかにした.その結果,助細胞胚乳融合が受精後における新規の遺伝子発現やCDK依存的な細胞分裂の進行を必要とすることが示された.これらの現象は種子発達自体においても必須であるため,多精変異体の取得にこれらを利用することは難しい.助細胞胚乳融合をモニタできる植物を元に,まずは助細胞胚乳融合に欠損を示す変異体を得ることが肝要である.

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

今年度は助細胞胚乳融合をきっかけにしておこる精細胞の輸送先変更の論文をまとめるため,花粉管から放出された精細胞が辿る通常の経路についてライブイメージングを行っている.花粉管は誘引物質に導かれて助細胞に到達した後も助細胞の内部を伸長し続けて精細胞を放出する.放出された精細胞は一瞬にして卵細胞と中央細胞の間に位置する受精領域へと到達する.しかし,これまでの報告ではどのにして正確な精細胞のポジショニングが達成されるのか明らかにはされていなかった.そこで,助細胞の細胞膜をGFPでラベルしたpMYB98::GFP-PIP2A形質転換体の胚珠に対して,サイトゾルをtagRFPでミトコンドリアをGFPでラベルした花粉管を用いsemi in vitro受精観察を行った.助細胞内部を伸長していた花粉管は破裂にともなって内容物を助細胞に注入していた.花粉管内容物はそれに留まらず助細胞を一瞬にして貫き,卵細胞と中央細胞の間を押し広げるようにして生まれた空間,すなわち受精領域に蓄積することがわかった.放出直後から活発だった花粉管や助細胞の原形質流動は停止をすることから,受精領域に送られた精細胞が掻き出されないようにしている様子が示唆された.これらのデータをまとめ,現在,論文を執筆中である.一方で,多精変異体の選抜において必須となる助細胞胚乳融合が起こらない変異体の取得を目標に,まずは,助細胞胚乳融合に必要な因子の探索の一環として,様々な阻害剤実験を行った.タンパク質合成阻害剤であるシクロヘキシミドや転写阻害剤であるコルジセピンで処理をすると,受精後の胚珠における助細胞胚乳融合は顕著に阻害された.同様の阻害作用はサイクリン依存性キナーゼCDKの阻害剤であるロスコビチンでも確認されたことから,受精後の新規の遺伝子発現や胚乳核分裂自体が助細胞胚乳融合において重要な役割をはたすことが明らかとなった.

Strategy for Future Research Activity

今後はまず,精細胞のポジショニングについての新たな知見を論文にするために努力をする.また,今後の被子植物の多精の仕組みを明らかにしていく基礎を作るため,助細胞胚乳融合のみ特異的に欠損するシロイヌナズナの変異体を作製する必要があると考えている.具体的には,シロイヌナズナの助細胞のミトコンドリアをCloverでラベルし, mRUBY2を融合したヒストンで助細胞核をラベルした二重マーカーラインを作出して,これを元に変異原処理を行う.受精後胚乳核が4~8核ほどに発達した種子を観察することによって,助細胞胚乳融合がおこらずに種子発達が進む変異体を選抜する.このような助細胞胚乳融合欠損変異体は,2本目の花粉管から受け取った細胞がしっかりと受精領域に到達をして,多精変異体を選抜するのにふさわしい遺伝的背景と考えることができる.現在のところ,助細胞をラベルする遺伝子をヘテロに持つ植物体が得られているので,これをホモに持つ株を選抜,種子を変異原処理して,変異体の選抜を行っていく.

Causes of Carryover

今年度の予算はほぼ計画通りに執行したが、一部の消耗品が28年度中に購入できなかったため。

Expenditure Plan for Carryover Budget

29年度において消耗品の購入にあてる。

  • Research Products

    (6 results)

All 2017 2016

All Journal Article (5 results) (of which Peer Reviewed: 5 results,  Acknowledgement Compliant: 3 results) Presentation (1 results)

  • [Journal Article] Spatiotemporal deep imaging of syncytium induced by the soybean cyst nematode Heterodera glycines2017

    • Author(s)
      Mina Ohtsu, Yoshikatsu Sato, Daisuke Kurihara, Takuya Suzaki, Masayoshi Kawaguchi, Daisuke Maruyama, Tetsuya Higashiyama
    • Journal Title

      Protoplasma

      Volume: 印刷中 Pages: 印刷中

    • DOI

      10.1007/s00709-017-1105-0

    • Peer Reviewed
  • [Journal Article] Pollen tube contents initiate ovule enlargement and enhance seed coat development without fertilization2016

    • Author(s)
      Ryushiro D Kasahara, Michitaka Notaguchi, Shiori Nagahara, Takamasa Suzuki, Daichi Susaki, Yujiro Honma, Daisuke Maruyama, Tetsuya Higashiyama
    • Journal Title

      Science Advances

      Volume: 2 Pages: e1600554

    • DOI

      10.1126/sciadv.1600554

    • Peer Reviewed
  • [Journal Article] The end of temptation: the elimination of persistent synergid cell identity2016

    • Author(s)
      Daisuke Maruyama, Tetsuya Higashiyama
    • Journal Title

      Current Opinion in Plant Biology

      Volume: 34 Pages: 122-126

    • DOI

      dx.doi.org/10.1016/j.pbi.2016.10.011

    • Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
  • [Journal Article] Cell fusion and nuclear fusion in plants2016

    • Author(s)
      Daisuke Maruyama, Tetsuya Higashiyama
    • Journal Title

      Seminars in Cell & Developmental Biology

      Volume: 60 Pages: 127-135

    • DOI

      dx.doi.org/10.1016/j.semcdb.2016.07.024

    • Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
  • [Journal Article] Fertilization-independent cell-fusion between the synergid and central cell in the polycomb mutant2016

    • Author(s)
      Kazuki Motomura, Frederic Berger, Tomokazu Kawashima, Tetsu Kinoshita, Tetsuya Higashiyama, Daisuke Maruyama
    • Journal Title

      Cell Structure and Function

      Volume: 41 Pages: 121-125

    • DOI

      doi.org/10.1247/csf.16010

    • Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
  • [Presentation] 植物システムを支える運命の分岐点2016

    • Author(s)
      丸山大輔、東山哲也
    • Organizer
      日本細胞生物学会
    • Place of Presentation
      テルサ京都(京都府京都市)
    • Year and Date
      2016-06-15

URL: 

Published: 2018-01-16  

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