2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K14543
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
多田 安臣 名古屋大学, 遺伝子実験施設, 教授 (40552740)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 植物微生物相互作用 / 植物ホルモンシグナル / サリチル酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
多様なトランスクリプトームデータから、SA合成やSAの初期認識に関与する可能性のある遺伝子群を選抜した。解析に供試した発現データは、1)4週齢の野生型シロイヌナズナ(Col-0)葉に病原性細菌であり、強いSA依存的免疫機構を活性化するP. syringae avrRpt2を接種したもの、2)同病原菌をNPR1欠損変異体であるnpr1植物葉に接種したもの、3)播種後12日目のCol-0葉に病原性糸状菌であるHyaloperonospora arabidopsidisを接種したもの、4)同齢のCol-0葉に細菌の鞭毛成分であるflg22を処理し、免疫系を活性化したもの、5)4週齢のCol-0葉にUV-Bを曝露したもの、6)同齢のCol-0葉にオゾンを曝露したもの、7)同じくCol-0葉に一酸化窒素を処理したもの、そして、8)SA合成系を活性化する、SAアナログのBTHを処理した4週齢の葉を用いた。全ての発現データセットにおいて、SA合成に関与するICS1の発現が有意に上昇していることを確認している。上記1~8の各プロファイルにおける発現遺伝子は、対照区と比較して1.5~2倍以上発現しており、全てのサンプルで発現が認められる遺伝子のみを選抜した。これらの遺伝子群を引き続くプロモーター解析に供試する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、多様なマイクロアレイ解析を行い、これまでにサリチル酸シグナルに重要であることが報告されている多くの遺伝子を含め約250の遺伝子を得ることができた。特筆するべきは、選抜遺伝子群には機能未知の転写因子が含まれることから、新規重要因子が網羅的に合成できたと考えている。予備的に選抜遺伝子群のプロモーター解析を行ったところ、特徴的なシスエレメントが極めて高頻度に出現することが明らかになり、同配列を認識する転写因子の同定に向け、クローニング等を進めている。以上より、当初予定した計画通りに進んでいるものと評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
同定した転写因子のT-DNA挿入ラインをABRC等のストックセンターから取り寄せ、同時に過剰発現体を作出する。これらの4週齢の植物葉にP. syringae avrRpt2を接種し、SAの蓄積やSA依存的遺伝子発現を調査し、当該転写因子の免疫系への関与を明らかにする。SA誘導系に影響は認められないものの、病害抵抗性反応が抑制されている変異体は、SA認識以降に不具合があると考えられるので、SAシグナルにおけるマーカー遺伝子であるPR-1、WRKY38やWRKY60の発現解析を行う。SAシグナル伝達における鍵転写補助因子であるNPR1は、同遺伝子群の活性化に必須であるので、NPR1の蓄積が生じているかもウェスタンブロットにより検討する。同様に、当該転写因子がNPR1と相互作用することにより、標的遺伝子群の転写調節を行っている可能性についても言及するため、AlphaScreen systemやpull-down法により相互用の有無を調査する。最終的にはプロモーター解析で得られた情報を基にChIP(クロマチン沈降法)-PCRを行い、in vivoにおいて予測シスエレメントに結合するかを検討する。これらの結果から、標的転写因子のSAシグナル伝達系における役割を結論付ける。
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