2015 Fiscal Year Research-status Report
NanoSuit法により新規同定された微小仮足に注目した発生・再生制御機構の解明
Project/Area Number |
15K14558
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
高久 康春 浜松医科大学, 医学部, 助教 (60378700)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 電子顕微鏡 / 高真空 / 生きたまま / NanoSuit |
Outline of Annual Research Achievements |
生物試料は、構成成分の70~80%が水であるため、高真空環境(10-3-10-7Pa)を必要とする電子顕微鏡で観察するには、事前の化学固定や脱水が不可欠と考えられてきた。しかしこれらの処理は、試料の変形やアーティファクトを生じさせる為、従来法による観察・解析による結果は、生体本来の構造を正確に捉えてはいなかった。我々は既に、全く新しいアプローチで生物試料の高真空・高分解能観察に成功している。昆虫の体表面物質(および疑似物質)を試料に塗布し、電子線およびプラズマ照射により体表全面に高気密NanoSuitを形成することにより、高真空中で試料を生きたまま維持・観察することが可能となった。 既に申請者らはNanoSuit法を用いて、発生における器官形成や組織再生過程において、直径が数百nmと細く、且つ全長が20~50μmに達する微小仮足の存在を確認している。これらは従来の形態学の技術では(壊れてしまって)全容を捉えることが出来なかった未知の構造体である。本申請ではさらに、微小仮足の高解像度電子顕微鏡観察に適したNanoSuit法の最適化を図り、このような謎の構造に焦点を当て、様々なモデル生物の発生や再生における微小仮足による制御・調節機構を解明する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
再生能力が高い腔腸動物ヒドラをモデル生物として用い、再生と微小仮足との連関を調べた。その結果、頭部再生の最初期にみられる傷口の修復過程(スピード)と微小仮足の発現頻度には相関がみられることが分かった。これまで、どのようにして傷口が塞がるのか不明であったが、このような微小仮足により動的に修復されることが示唆された。アクチンの重合を阻害すると仮足は発現しないことも併せて明らかになった(Takaku et al, 論文作成中)。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、様々なモデル生物の発生や再生における微小仮足による制御・調節機構を解明に加え、発生異常の個体(あるいはガン組織など)や、再生ができない種(あるいは特定の部位)との比較により、微小仮足が担う機構を明らかにし、異常や不能の改善を試みる。
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Causes of Carryover |
昨年度は、微小仮足の高解像度電子顕微鏡観察に適したNanoSuit法の最適化を図り、3種類の新規保護溶液の開発に成功した。溶液の合成を中心に据えたため、網羅的な観察・解析は次年度へと持ち越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
新規作成に成功した微小仮足観察用の保護溶液を用い、網羅的な観察を行い研究をまとめる。電子顕微鏡観察にあたっては、数名の技術補助員を雇用し研究を推進する。
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Research Products
(9 results)