2015 Fiscal Year Research-status Report
オルガネラソート技術開発によるミトコンドリア母性遺伝の分子メカニズムの解明
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15K14559
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
佐々木 成江 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (20359699)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 母性遺伝 / ミトコンドリア |
Outline of Annual Research Achievements |
ミトコンドリアの「母性遺伝」は、様々な真核生物に共通に見られる現象である。これまでに、父方のミトコンドリアDNAがヌクレアーゼで完全に分解されることの重要性が示唆されているが、鍵分子であるヌクレアーゼはまだ同定されていない。本研究では、大型のミトコンドリア核様体を持つ真正粘菌を用い、セルソーターを応用した「オルガネラソーター」の技術を開発し、接合子内でDNAが消去されつつある父方由来のミトコンドリアを回収し、ヌクレアーゼを同定することを目指している。27年度では、まず父方由来のミトコンドリアをセルソーターで検出できるように蛍光ラベルする方法を検討した。ミトコンドリアの蛍光ラベルによく用いられるマイトトラッカーを用いたところ、真正粘菌においては、蛍光が弱く、ほかの構造物も染色されてしまうことが分かった。そのため、さまざまな蛍光色素を合成し、ミトコンドリアが強く染色されるものをスクリーニングした。その結果、いくつかのカチオン性の蛍光色素でミトコンドリアが強く染色されることが分かった。また、より多くの接合子を回収するために、高効率に接合する条件の検討(生育温度、pH、細胞濃度、Caイオンの添加)も行った。その結果、pHが低い方が接合率が上昇し、pH4付近で最も接合率が高くなることが分かった。さらに、アメーバや接合時に発現している遺伝子を解析するために、アメーバーと接合子からRNAを抽出し、次世代シークエンサーを用いて、トランスクリプトーム解析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
セルソーターを応用した「オルガネラソーター」の技術を開発するためには、ミトコンドリアを蛍光ラベルする必要がある。市販されているミトコンドリア染色試薬は、真正粘菌のミトコンドリア染色に適していなかったが、新たに染色できる試薬を見つけることができたため、今後、予定していたオルガネラソーターを用いた解析を進めることができる。また、今後予定しているプロテオミクス解析の準備として、次世代シークエンサーによるアメーバと接合子のトランスクリプトーム解析を行った。また、より多くの接合子を回収するために、高効率に接合する条件の検討を行い、酸性条件(pH4)が重要であることが分かったが、今後もさらなる高効率な接合条件を検討することが必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
単離したミトコンドリアを超高感度なDNA染色試薬であるサイバーグリーンで染色し、フローサイトメーターでミトコンドリア内のmtDNA量を定量できる条件を検討する。同時に父方由来のミトコンドリアをカチオン性の蛍光色素で染色することでフローサイトメーターで検出し、父方由来のミトコンドリアで、かつmtDNA量が減少しているミトコンドリアを回収する。また、同様の解析を、共同研究により開発中のサイバーグリーンよりも安定で蛍光強度が高いDNA染色試薬を用いて行う。そして、それぞれの結果を比較し、mtDNAを分解している父方ミトコンドリアを効率よく回収できるDNA染色試薬を選択し、オルガネラソーターシステムに用いる。さらに、オルガネラソーターシステムにより回収した父方由来ミトコンドリアに含まれるタンパク質を網羅的に同定するために、質量分析を用いたプロテオミクス解析をおこなう。
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Causes of Carryover |
27年度に予定していた技術補佐員の雇用を、28年度に変更したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
技術補佐員1名を雇用する。
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