2015 Fiscal Year Research-status Report
ゲノム編集技術と核移植を併用した短期間での遺伝子改変クローン集団の作出
Project/Area Number |
15K14562
|
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
高宗 和史 熊本大学, 自然科学研究科, 教授 (20206882)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北野 健 熊本大学, 自然科学研究科, 准教授 (40336219)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | ゲノム編集 / 核移植 / 両生類 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.TALEN等の人工ヌクレアーゼを用いたゲノム編集は、遺伝子機能の解析に有効な技術である。無尾両生類アフリカツメガエルにおいても人工ヌクレアーゼを用いたゲノム編集は可能であるが、性成熟期間が長いため、F1個体やF2個体の作出により同一変異個体群を得るためには時間を要する。この問題を解決するために、核移植によるクローン作出技術を併用し、短期間で解析に必要な個体群を得る実験系を確立することが本研究の目的である。これまでに、除核法、および供与核の調整時期を検討し、微小ピペットを用いた吸引法による卵核の除去、および原腸胚外胚葉細胞から供与核を調整することにより、実験開始当初ほぼ0%であった正常卵割率が平均50%まで上昇した。その後の発生において奇形になる個体が数多く生じるのが現状であるが、正常に変態した幼体を得ることができたことから、実験条件としては問題ないと判断している。 2.発生が進んだ細胞の核を用いた場合、核移植効率が激減する。そこで、ゲノム編集操作を行ったどの個体に目的の変異が入っているか解析が完了するまで細胞を凍結保存できないか簡易ガラス化法を用いて検討した。初期原腸胚を凍結・解凍後、死細胞を染めるトリパンブルー染色を行ったところ、染色されない細胞が存在する条件を見出した。しかし、この細胞核を用いて核移植を行ったが、未だ卵割を開始する卵を得ることには成功していない。変異解析のための時間を確保する目的で、1週間培養した胚細胞を用いて核移植を行った。卵割率は15%であったが、この割球を用いて再度核移植を行ったところ、正常卵割率が約40%まで上昇した。この方法を用いて、変異解析後に核移植によるクローン作出が可能になった。 3.生殖細胞特異的に発現するXtr遺伝子の機能破壊を行うためにTALEN mRNAを作成し、効率よく変異を入れることができるmRNAを選別することに成功した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.核移植の条件がほぼ確立した。 2.人工ヌクレアーゼにより変異を入れた胚細胞の中で、どの細胞に目的の変異が入っているか調べる間、細胞を凍結する計画をしていたが、未だ凍結保存法は確立していない。しかし、1週間培養した胚細胞の核を用いてクローン個体を作出できることが明らかになったことから、変異解析を行う時間を確保することが可能になった。このことから、当初の計画は達成できなかったが、目的は達成できた。 3. venus遺伝子を挿入したtransgenic個体を用い、このvenus遺伝子に変異を入れるTALEN mRNAもしくはCRSPR mRNAの作成を計画していたが、手持ちのtransgenic個体卵の正常発生率が悪かったことから、この計画を断念した。代わりに、既に報告があるtyrosinase遺伝子に変異を入れるCRISPR mRNAを作成している。Xtr遺伝子に変異を入れることができるTALEN mRNAの選別は、既に終えた。 以上のことから、おおむね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
実験条件がほぼ確立したことから、実際に遺伝子に変異を導入した胚細胞の核を移植することにより、クローン個体集団の作出を行う。変異を導入する遺伝子としては、tyrosinase遺伝子とXtr遺伝子を計画している。 CRISPR mRNAとCas9タンパク質(tyrosinase遺伝子を標的とする)、もしくはTALEN mRNA(Xtr遺伝子を標的とする)を受精卵に顕微注入する(これを第1世代とする)。初期原腸胚まで発生したところで外胚葉を切り出す。外胚葉以外の部位からはゲノムDNAを抽出し、目的遺伝子への変異の入り方をgenomic PCRおよびシークエンスにより明らかにする。外胚葉は解離し、細胞核を用いて除核した未受精卵に核移植を行う。少なくとも10個の正常発生個体を用意し(これらを第2世代とする)、初期原腸胚になったところで一部を切り出し、組織培養を行う。残りの部位からはゲノムDNAを抽出し、genomic PCRにより目的遺伝子部位を増幅し、遺伝子への変異の入り方を明らかにする。CRISPR/Cas9やTALENの顕微注入により変異を入れ発生させると、多くの場合、細胞によって変異の入り方が異なるため、第1世代のゲノム解析の場合、1個体から複数種の変異遺伝子が検出できる。一方、第2世代の場合、全ての細胞核が移植した核由来になることから、多くても2種類の変異遺伝子しかないはずである。このことを次世代シークエンサーを用いて確定する。その後、目的の変異が入っている胚由来の培養細胞核を用いて核移植を行う。この核移植胚が初期原腸胚になったところで、この細胞核を用いて再び核移植胚を作成する。この作業を繰り返すことで核の初期化を行い、核移植個体の正常発生率を高めて、クローン個体集団を得る。以上の成果を得ることで、実験系が確立したことを証明する。
|
Causes of Carryover |
年度末に計画していた平成27年度成果確認実験に使用する薬品を購入するようにしていたが、この確認実験を新年度に行うことになったため,平成28年度に購入することにした。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初、年度最後に確認実験を行う計画にしていたが、新年度になって新しい実験を開始する直前に確認した方が効果的であると判断したことから、この実験に用いる薬品を平成28年度計画に加えて購入する。
|