2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K14563
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
風間 裕介 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器研究センター, 協力研究員 (80442945)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 配偶子形成 / 植物 / 合成致死 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物の新奇合成致死現象である、「合成無理心中現象」を形態学的にあきらかにする。本現象は、モデル植物シロイヌナズナの2つの変異体の交配実験で発見した。ある遺伝子(A)の変異体と、別の遺伝子(B)の変異体とを交配したところ、それぞれの遺伝子は別々の染色体に座乗するにもかかわらず、メンデルの独立の法則に反する遺伝様式が観察された。両遺伝子の変異型ホモ(aabb)が後代に遺伝しないのに加え、野生型ホモ(AABB)の遺伝も著しく妨げられたのである。この奇妙な遺伝現象を説明するため、「メス側、オス側の配偶子ともヘテロ接合の細胞(AbもしくはaB)だけが遺伝し、変異型ホモ接合の細胞(ab)は野生型ホモ接合の細胞(AB)を伴って致死となる」という無理心中仮説を立てた。配偶子形成過程において、ABをもつ配偶子はabをもつ配偶子と、Abをもつ配偶子はaBをもつ配偶子と、それぞれ結合しながら発達することが知られている。この発達過程において、abをもつ配偶子がABをもつ配偶子を道連れにして致死となる「無理心中」を想定すれば、メンデルの独立の法則に沿った現象として、本現象を説明できる。 本年度はまず、無理心中現象が起ると想定される株(AaBb)を作製した。AaBb株の葯をとりだし成熟花粉と未熟花粉とを染め分けるアレキサンダー染色を行ったところ、約半数の花粉が未熟花粉であった。次に、AaBb株のつぼみを固定して切片を作製し花粉の発達段階を観察したところ、小胞子期以降で発達が停止し萎縮する細胞が観察された。DAPIでDNAを染色すると、四分子期以降にDNAが分解されてしまう細胞が観察された。また、次年度に向けて、両遺伝子の産物を認識する抗体の作製を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
無理心中現象を顕微鏡で観察することに成功し、無理心中現象が生じるステージをある程度特定できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
無理心中現象の結果死ぬ細胞と、生き残る細胞の遺伝子型を識別し、変異型ホモ接合の細胞(ab)が野生型ホモ接合の細胞(AB)を伴って致死となることを観察し、無理心中仮説を証明したい。
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Causes of Carryover |
本年度は、無理心中現象が生じるステージを特定することに成功した。次年度には、同ステージの標本を、抗体染色や電子顕微鏡観察等、様々な実験に大量に用いることになる。そのため、植物の育成、遺伝子型の判定、組織の固定、標本の作製までの作業を、パートタイマー等のアシスタントが行えるような体制を整えることが、効率よく研究を遂行するために望ましいと考えた。そこで次年度に向け、作業のマニュアル化を進め、次年度にパートタイマーを雇用できる謝金を繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
植物の育成、遺伝子型の判定、組織の固定、標本作製までの作業を一貫して行うパートタイマーの謝金として、主に使用する。
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Research Products
(1 results)