2015 Fiscal Year Research-status Report
新規光感受性タンパク質を介した鞭毛繊毛運動の光制御
Project/Area Number |
15K14566
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
稲葉 一男 筑波大学, 生命環境系, 教授 (80221779)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ダイニン / 繊毛運動 / 光受容 / 青色光 / 精子 / 微小管 |
Outline of Annual Research Achievements |
軸糸ダイニンは真核生物の鞭毛繊毛運動に関与する分子モーターであり、外腕ダイニンと内腕ダイニンが存在する。外腕ダイニンに比べ、内腕ダイニンの分子構成は複雑であり、特に動物系統の内腕ダイニンについては、その分子構成や機能はほとんどわかっていない。本研究では、ホヤ精子鞭毛の2頭ダイニン(ダイニンf)に結合する新規因子として、BLUF (blue-light using FAD)ドメインをもつタンパク質を同定し、これをDYBLUP (Dynein-associated BLUF protein)と命名した。DYBLUPはホヤやウニ、マウスに加え、植物系統であるクラミドモナスにも存在することが明らかとなった。また、DYBLUPはダイニンのベータ重鎖に結合するが、特にATPを加水分解し力を発生するモータードメインに結合していることが免疫電子顕微鏡法により明らかになり、光が直接ダイニンのモーター活性を制御している可能性がある。DYBLUPと他のBLUFタンパク質との配列比較解析により、DYBLUPのFAD結合ドメインに含まれるアミノ酸が他のBLUFタンパク質で保存されているものと異なることがわかり、新たなリガンドの存在やBLUFドメインの機能の存在が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新たなダイニンサブユニットであるDYBLUPのリガンドの同定と繊毛運動調節における役割についてはまだ進展が見られないものの、DYBLUPの生化学的な性質、ダイニンにおける分子局在について大きな進展が得られ、論文を投稿できるところまで達成している。
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Strategy for Future Research Activity |
DYBLUPのリガンドの有無、もしリガンドがある場合にはその同定を行う。すでに精子鞭毛にFAD、FMN、リボフラビンが存在することがわかっており、これらがDYBLUPに結合しうるのかを検証する。同時に、薄層クロマトグラフィーにより、これらフラビン類以外のリガンドがある場合にはそれを同定する。DYBLUPの生理機能については、クラミドモナスのDYBLUP欠損株が作製され、間もなく入手予定である。これを用いてDYBLUPが繊毛運動において果たし役割を解明する。
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Causes of Carryover |
電子顕微鏡によるDYBLUP結合部位の同定作業に時間を費やしたため、実施計画の「リガンドの同定」が一部先送りになってしまったため、その経費分を次年度に繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
主にダイニンサブユニットの精製、 DYBLUPの分離とリガンドの精製、NMR等によるリガンドの同定に充てる。
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