2015 Fiscal Year Research-status Report
暗闇で仲間を認識するゴエモンコシオリエビの感知能力を探る
Project/Area Number |
15K14571
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
和辻 智郎 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 深海・地殻内生物圏研究分野, 研究員 (50409091)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 蛍光物質 / 外骨格 |
Outline of Annual Research Achievements |
沖縄トラフの深海熱水域には集団で生息する十脚甲殻類のゴエモンコシオリエビが生息している。ゴエモンコシオリエビは腹側の体毛に付着した外部共生菌をエサとして食べて生活していることをこれまでに明らかにした。その研究の中で、ゴエモンコシオリエビの外骨格は蛍光物質を含むことが判った。しかし、これまで十脚甲殻類の外骨格に含まれる蛍光物質が同定された例はないことから、本研究はゴエモンコシオリエビの蛍光物質を特徴付けることを第一の目的とした。また、通常の甲殻類が有する外骨格の色素をゴエモンコシオリエビは持たないため、白い姿をしているが、その一方でゴエモンコシオリエビは蛍光物質を外骨格に含むというユニークな特徴を示すことになった。そのため、本研究は第二の目的として進化の過程で獲得したと考えられる蛍光物質の生理的役割を解明することを目的とした。昨年度は外骨格から蛍光物質の抽出と精製を試みた。外骨格に含まれる蛍光物質は水に不溶であることが確認されたことから、冷凍保存されたゴエモンコシオリエビをブレンダーで粗く破砕し、その破砕物を水を入れたバケツに加えて撹拌した。水より比重の高い外骨格は静置によって沈殿させて回収することができるため、回収と洗浄を水の濁りが無くなるまで行った。回収した純度の高い外骨格を凍結乾燥させた後、ブレンダーで粉末状になるまで破砕した。その後、粉末状の外骨格に含まれる蛍光物質の抽出溶媒と精製条件の検討を重ねた結果、蛍光物質を精製することに成功した。現在は精製された蛍光物資を同定するための分析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
天然物質を同定する研究において、構造分析に必要とする量の精製物を用意することが困難である場合が少なくない。しかしながら、本研究では現在までに構造分析に必要量の精製物を確保することができている。したがって、研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は精製した蛍光物質の同定を目標とし、研究を推進させる予定である。また、平成28年度は蛍光物質の生理的役割を解明するための行動実験を予定しているため、計画通り生きたゴエモンコシオリエビの捕獲を行う。
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Causes of Carryover |
蛍光物質の精製条件の検討に関わる経費が予想ほどかからなかったため、未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
雇用するパートタイマーの人件費を所属する研究所の規程に従って支払うために使用する。
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