2017 Fiscal Year Research-status Report
真核生物のオスとメス、2つの性の起源と進化に関する細胞構造学的研究
Project/Area Number |
15K14579
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
宮村 新一 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (00192766)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 性 / 進化 / 配偶子 / 緑色植物 / 細胞構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
多くの真核生物はオスとメス、二つの性を持つが、その起源と進化については不明な点が多い。もしも、オスとメスと区別がつかない同型配偶子と雌雄の違いが明確な異型配偶子の両者に共通する「二つの性を区別する普遍的な性質」が見つかれば、その性質の起源、進化、メカニズムを解析することで、二つの性の期限と進化の問題を解明する手がかりが得られると考えられる。このような性質として一般的なのは、「性決定遺伝子」であるが、本研究では、緑藻植物の同型、異型配偶子に存在する細胞融合装置である接合装置の細胞構造と細胞内配置に注目して「二つの性を区別する普遍的な性質」を細胞・分子レベルで明らかにすることを目的として研究を行なった。そのために、単細胞緑藻クラミドモナスを用いて接合装置の空間配置が異常になっている変異株の単離を試みた。クラミドモナスは交配型プラスとマイナスの二つの性を持つ二本鞭毛の同型配偶子を形成する。野生型のクラミドモナスの場合、プラス株では、接合装置は鞭毛運動面を基準として光受容装置である眼点と反対側の鞭毛基部にあるが、マイナス株では同じ側に存在する。プラス株とマイナス株の配偶子を混合すると、配偶子は鞭毛で凝集し、プラスとマイナスのペアを形成し、次いでプラス株の接合装置から受精管が伸長し、マイナス株の接合装置に結合して細胞融合が始まり、4本鞭毛の動接合子を形成する。動接合子では、プラスとマイナス由来の鞭毛が平行に並び、二つの眼点が細胞の同じ方向に並ぶ。本研究では、プラス株を用いて変異体の単離を試みた。そのために二種類のスクリーニングを試みた。一つは配偶子の接合方向が異常になっている変異株を光学顕微鏡で探索する方法、もう一つは受精管を蛍光抗体染色することで、直接、接合装置の場所を確認する方法を試みたが、今だに目的とする変異体の単離に至っていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
緑藻クラミドモナスのプラス株を材料として抗生物質耐性遺伝子を用いた挿入突然変異体の単離を試みたが、目的とする変異体の単離には至っていない。抗生物質が入った培地で生育してきたコロニー由来の細胞に抗生物質耐性遺伝子が挿入されていることはPCRで確認しており、スクリーニングの過程で鞭毛がないために接合しない変異体などは単離されてきているので突然変異体の作成自体は問題がないと考えられる。そのために、変異体が単離されない原因としては、スクリーニングの方法および効率に問題があるのではないかと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
目的とする変異体が単離されていない原因の一つとしては、スクリーニングの効率の問題があると考えられる。クラミドモナスのプラス株の配偶子に存在する受精管を蛍光抗体染色することで、直接、接合装置の場所を確認する方法でスクリーニングを行なっているが、蛍光抗体染色や顕微鏡を使った観察に時間がかかることもあり、あまり効率的でないと考えられる。しかしながら、顕微鏡観察以外の方法で目的とする変異体を単離することが難しいため、この問題を解決するためには染色方法を短時間でできる方法に改良することなどが必要だと考えられる。今後は、スクリーニング方法を改良して目的とする変異体の単離を続けていく予定である。
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Causes of Carryover |
昨年、体調不要のため入院し、しばらく研究が中断したために、当初の計画より研究が大幅に遅れた。そのために次年度使用額が発生した。研究期間の1年延長を申請したので、今年度は、当初の目的である、配偶子における接合装置の空間配置異常株の単離を目指す予定である。
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Research Products
(5 results)