2016 Fiscal Year Research-status Report
飛行能力がもたらす戦闘能力の急速な局所適応:人工群島のクモ群集をモデルとして
Project/Area Number |
15K14597
|
Research Institution | Miyagi University of Education |
Principal Investigator |
林 守人 宮城教育大学, 教員キャリア研究機構, 研究員 (70625037)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 進化 / 生態 / 島嶼 / 水上行動 / 風媒 / 分散 / サラグモ / アシナガグモ |
Outline of Annual Research Achievements |
①本プロジェクトを通して発表された,サラグモにおける水上行動の研究から派生した,これまで未報告の行動形質と,その進化的バックグラウンドを明らかにした.②結果の解析とそこから構築された理論に関して,講演を通し一部を発表し,論文執筆時に有用な多種多様なフィードバックを頂いた.③本プロジェクトで取得した実験結果は,データを保存しているエクセルファイルを開くのも時間がかかる程,大きなものとなっており,その分析が手動の解析では,追いつかない状態になってきている.従って,データのフォーマット以外は全て自動で解析するプログラムを組み,この新システムのテスト運用を行った.
該当年度において,サラグモの耐水性や認識能力(もしくは反射)に関しては,今までの常識を覆す結果を得た上,分散生態学の新規理論構築に有効である.一連の研究を通して,一昨年度に行われた,陸上グモの帆走行動を報告・分析した論文発表後,Nature誌を含む数多くのメディアから寄せられた「自然状態におけるクモの水上移動とその持続性」に関する質問に対して,極限状態を想定した実験に基づく,明確な解答を準備することが出来た.これらの成果の一部は,招待講演によって発表され,環境学,地質学,シミュレーション,ビックデータ解析など今までの研究活動ではあまり交流の無かった分野の方々からも,ユニークなフィードバックを数多く頂いた.また講演の場で得た,科学ソフト製作を専門とする,優れたプログラマーとの交流を通して,これまで取得した大量のデータを全て処理する為の新しい解決策を見出す事が出来た.現在フォーマットを整えている論文原稿は,これら種々のアドバイスを盛り込み,分野内はもちろん分野外の研究者や一般の方々が目にしても,理解し楽しむ事の出来る内容に仕上がった.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
論文執筆,データ解析共に順調である.学術上重要と予想されるデータは,これまでの手法を用い解析,作図,論文原稿の第一稿が完了している.ただし前述の通り,未解析のデータを含め,プロジェクトから産出されたデータの蓄積が膨大になってきている事から,ビックデータ解析のシステムを早急に整える必要性が出てきている.自身でも昨年度から大量のデータを全自動で解析する事を目的としたプログラムを組んでいる.このプログラムは,有効データの切り出した後,そのデータに最適な解析方法を判断し,解析を行った上で結果を順次保存出来るようデザインされている.本プログラムを他プロジェクトの解析で試験導入したところ,筆者のパソコンでは動作が重く,またファンが高速回転を続け不安なものの,手作業で処理する事が現実的にほぼ不可能な量のデータを約5日間の連続運転で算出し終える事が出来た.該当年度では,プログラムの完成までに数ヶ月を要したものの,今後は自動化の恩恵を受ける事が出来るため,この効率化が全ての工程を通して,プラスに波及すると考えている.
|
Strategy for Future Research Activity |
行動データの解析と同時に,論文投稿に注力する.論文は,①分散生態学の新しい理論構築に寄与するもの,②クモの状況判断(もしくは条件反射)に関するもの,③島嶼群集の成立に関するものそれぞれ一編を出版する事を目指している.また,前述の未解析の行動データは,全て筆者が書いた複数のプログラム用にフォーマットを変換し,全て自動で分析を行う.この解析の自動化により,今まで手動で地道に行ってきた作業が無くなり,より執筆にエフォートをかける事が可能になると考えている.従って次年度は,本プロジェクト内の論文執筆のエフォートを90%に引き上げ,データ解析を残り10%という目標設定を設けている.未解析データに,どんな発見が眠っているのか分からないが,自分の仮説に沿うものやこれらの想像を超える意外性のある結果を見る事が出来れば嬉しい.
|
Research Products
(3 results)