2015 Fiscal Year Research-status Report
種多様性の連鎖反応が強化する生態系サービス:ハエ目―天敵―害虫系による検証
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15K14600
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宮下 直 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (50182019)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 生物多様性 / 生態系機能 / ボトムアップ効果 / 生物防除 / 時間変動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、栃木県塩屋町の水田において、水田害虫の天敵であるアシナガグモ類(3種ほど存在する)の主要な餌であるハエ目(ただの虫)の多様性が、ハエ目自身の個体数の時間変動や天敵(アシナガグモ類)の個体数に及ぼす影響を明らかにするため、以下の2つの仮説を検証した。①ハエ目の季節的な種の時間的入れ替わり(相補性)は、ハエ目の個体数の変動を安定化させ、個体数を高める、②ハエ目の個体数が増加するほどアシナガグモ類の個体数が高まる。調査は季節的な種の相補性を評価するため、2015年6~8月にかけての6時期で調査を行った。具体的には、本年度は、そのうちの4時期でハエ目の同定と個体数の計測を行った。まず、仮説を検証するための指標を決定した。ハエ目の種の季節的な相補性の指標としては、時期が移り変わる際に群集中に加入する種数(加入種数)、そして、ハエ目の季節的な個体数の安定性や個体数のレベルを示す指標は独自に指標を作成した。解析の結果、農法によって傾向が異なっていたもののハエ目の加入種数は自身の安定性や個体数を高める傾向があること、そして、ハエ目の個体数がアシナガグモ類の個体数を増加させることが示唆することができた。なお、ハエ目にはユスリカやチョウバエ、ヌカカ、タマバエなどが含まれている。なお、3月の日本生態学会大会では、この研究でポスター発表をした学生が優秀賞を受賞した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ハエ目の種レベルの同定はDNA解析が必要であるが、現在は材料を採集するにとどまっている。しかし、研究協力者の承諾も受けているため、次年度前半には目立がたつ見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は昨年度採集したハエ目のDNAバーコーディングを行うとともに、アシナガグモ類を採集し、胃内容物に含まれるDNAを抽出して、実際にどのような餌を季節を通して食しているか明らかにする。その結果をもとに、ハエ目の多様性に対するアシアシナガグモ類の餌メニューの応答、および植食性昆虫への餌の季節的シフトを明らかにする。
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Causes of Carryover |
当初は採集したサンプルを使ってDNAの予備解析を行う予定であった。しかし、採集サンプルの同定作業に予想以上に時間がかかったことから、翌年度に持ち越すことになった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
5月中旬以降からDNAの予備解析に着手する予定である。
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