2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K14603
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
曽田 貞滋 京都大学, 理学研究科, 教授 (00192625)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ベイツ型擬態 / 超遺伝子 / 遺伝的多型 / 多型維持機構 / 自然選択 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)ナガサキアゲハの擬態型と非擬態型に対応する,doublesexの2つの対立遺伝子が存在することを示した論文を発表した(Komate et al. 2016, Scientif Reports).またこの論文で,個体が持つdoublesexの対立遺伝子型をゲノムDNAからリアルタイムPCRを使って簡便に判定する方法を示し,台湾と沖縄での擬態遺伝子頻度の分布調査結果を報告した. (2)台湾花蓮において,ナガサキアゲハとモデルのアゲハチョウ科種の個体数調査を行い,擬態遺伝子頻度の時間的変化に関するデータを得た. (3)台湾花蓮における4年間のナガサキアゲハとモデルのアゲハチョウ科種の調査結果を論文にまとめ,擬態遺伝子頻度の時間的推移とモデル種の個体数動態の関係を示した.この論文においては,擬態型遺伝子の頻度が50%程度の水準でつねに高く維持されていること,モデル種(主にオオベニモンアゲハ,ベニモンアゲハ)は春先に多いが,夏から秋には比較的少なく,擬態種のナガサキアゲハの方が多いことを明らかにし,モデル種が低密度であるために,擬態型の適応度が圧倒的にならず,多型が維持されていることを示唆した.また,ナガサキアゲハの擬態型・非擬態型の雌の間には,寿命や交尾回数の差がなく,適応度が釣り合った状態にあることが示唆された.さらに,野外で行った擬態型・非擬態型雌に対する雄の配偶者選択実験の結果,雄による型の選択はランダムであることを示した.論文は次年度始めに投稿の予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
擬態型・非擬態型のスィッチ遺伝子と遺伝子型判別法に関する論文を公表できたことと,擬態遺伝子頻度の動態に関する論文の投稿準備がほぼできたことによる.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度中に,擬態遺伝子頻度の時間的動態に関する論文と,擬態型・非擬態型の発育・成長特性の比較に関する論文を公表する. アゲハチョウ科における,doublesexの対立遺伝子による擬態多型制御の起源を解明するためには,これまでに調べられたシロオビアゲハ,ナガサキアゲハに近縁な,擬態しない種を含めた研究が必要であるので,比較ゲノム研究にむけたサンプリングを試みる.
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Causes of Carryover |
論文作成の過程で英文校閲を予定していたが,この英文校閲を次年度初めに行うこととしたため,繰越が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記の論文の英文校閲を4月に行い,繰り越し分を使用する.次年度分の助成金は予定通りに使用する.
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Research Products
(2 results)