2015 Fiscal Year Research-status Report
ニッチ適応と非平衡性に基づく中立理論の拡張と保全生態学への適用
Project/Area Number |
15K14607
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
久保田 康裕 琉球大学, 理学部, 教授 (50295234)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 種多様性 / 中立モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
生物群集の中立理論は、生物多様性の形成機構を検証する帰無モデルとして発展している。さらに、平衡性を仮定した中立理論は、人為影響が群集形成に及ぼす影響を定量できる可能性を秘めており、保全生態学への導入も期待されている。そのような観点から、本研究では、生物多様性パターンの進化生態学的形成プロセスを記述する生物群集の中立モデルを検討し、実際に野外で観察される生物群集の種多様性パターンを分析した。研究の初年度では、様々な生物分類群(微生物・維管束植物・無脊椎動物・脊椎動物)の種個体数分布(SAD)をデータベース化し、SADの形成プロセスを分析し、2編の原著論文を発表した。一つ目の論文では、全球を網羅する森林群集に焦点を当て、木本種の個体数分布の中立性からの逸脱度を定量した。そして、環境フィルター効果と密度依存的死亡(Janzen-Connell効果)の地理的パターンを明らかにした。熱帯や島嶼など、特異な進化生態学プロセスが卓越していそうな地域では、群集形成が非中立であることが示唆された。しかし、環境フィルター効果やJanzen-Connell効果には、単純な環境勾配はなく、群集形成のプロセスは、同じバイオームでも地域差が大きいことが判明した。二つ目の論文では、木本種の個体数分布の統計分布を分析し、全球の森林群集で共通したパターンを探索した。生物多様性パターンの統計分布は、それ自体がパターン形成のメカニズムを示している訳ではないが、パターンをうまく説明する「統計分布の性質」を元にして、パターンの背後にある進化生態学的メカニズムがある程度推論できることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究初年度において、既に2編の原著論文を発表できた。それぞれの論文は、進化生態学分野の一流雑誌であり、論文発表の直後から、数多くの別刷送信依頼があった。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度は、様々な生物分類群の局所群集における種個体数データベースを完成させ、特に森林(木本種)に焦点を当てて研究した。次年度は、脊椎動物などその他の分類群データも解析し、その成果を学会や原著論文として発表したい。また、種多様性パターンの機構解明を基盤とした、人為インパクト評価も行い、応用面での分析を行う。
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