2015 Fiscal Year Research-status Report
森林生態系における土壌炭素放出に対する根圏滲出物の量的寄与と環境応答特性の解明
Project/Area Number |
15K14609
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
小泉 博 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (50303516)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 森林生態系 / 根圏滲出物 / 炭素動態 |
Outline of Annual Research Achievements |
森林生態系の炭素収支は,植物による総光合成量と全呼吸量(植物体地上部,地下部,土壌有機物分解)の収支,または,純一次生産量と土壌有機物分解呼吸の収支として表されてきた。しかし,このうち土壌有機物分解呼吸とされるものには堆積リターと植物根から滲出する新鮮な光合成産物に由来するものがあり,これらの量的バランスや変動メカニズムはいまだに不明である。本申請課題では,森林生態系の土壌からの炭素放出に対する根からの滲出物(エクスデーション)の量的寄与や環境応答特性を生態学的な面から解明する研究を展開するために,①樹木個体レベルでの滲出物量と光合成生産量との関係をそれらの環境応答とともに生理生態学的手法により解明し,②その手法と知見を森林調査フィールドに適用することを目的とする。 平成27年度には、人工気象室における室内実験で栽培したコナラ稚樹を用いて、制御環境下における滲出物量の測定を行った。現段階では、室内実験における稚樹(コナラ・アカマツ)の光合成によって固定された炭素量のうち、培地へ滲出された炭素の割合をフィールドスケールへと換算することで推定が可能である。既に炭素循環の基礎的な項目について十分調査が進んでいる森林(コナラ林・アカマツ林)に換算値を適用すると、根圏滲出物量はアカマツ林と比べコナラ林の方が4倍程度高い値を示していた。滲出物量が多いと樹木の成長量や微生物量も大きくなるとされており、本研究はその結果と一致していた。また、森林の純一次生産量のうち、根圏滲出物量が占める割合はコナラ林で12.4%、アカマツ林で4.6%であったが、従来の研究ではこれらの値が無視されており、純一次生産量が過小評価されていたと推察される。従って、炭素の根圏滲出はその役割や純一次生産量に寄与する割合の大きさから、森林生態系の炭素循環を考えるうえで無視することができない要素であることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
室内実験に用いた植物(コナラ稚樹)の成長も研究計画通りに進み、滲出物量の測定についても当方の手法により概ね良好に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
概ね順調に進捗しているので、平成28年度も研究実施計画書通り推進していく。
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Causes of Carryover |
初年度(平成27年度)は室内実験を中心に実施したため、旅費および謝金の利用を行わなかった。また、物品費についても、既存の測器を利用したために残額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は野外での調査・測定を中心に据えるため、野外における環境計測のための物品を購入する予定である。また、旅費および謝金等の使用も計画している。
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