2015 Fiscal Year Research-status Report
個体群時系列データ解析に基づく群集ネットワーク構造の推定
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15K14610
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
近藤 倫生 龍谷大学, 理工学部, 教授 (30388160)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
潮 雅之 龍谷大学, 科学技術共同研究センター, 博士研究員 (40722814)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 群集ネットワーク / 非線形動態解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
生態系における生物種間の相互作用を推定することは、群集構造やその動態を理解・予測する上で欠かせない。しかし、自然生態系における種間相互作用の検出は一般に容易ではなく、また、観察された個体間の相互作用が個体群~群集動態を駆動するかどうかの判定はきわめて困難である。そこで本研究では、Convergent Cross Mappingと呼ばれる非線形動態理論から導かれる解析法を発展させ、多種個体群時系列データから種間相互作用を推定する手法を開発したうえで、それを実データに適用することで実証試験を行う。さらにそこから種間相互作用ネットワークの構造と動態についての新しい知見を得ることを目的とする。 平成27年度は、個体群密度の時系列データより種間相互作用を推定する時系列解析手法を開発した。この手法を種間相互作用が既知であるような種数の少ないミクロコズム実験系やマメゾウムシ-寄生蜂実験系から得た時系列データに適用し、実際に種間相互作用を正しく推定できることを確認した。沖縄における農業害虫とその寄生者の時系列データに同手法を適用し、種間相互作用の検出を行った。また、S-mapと呼ばれる解析手法を応用することで、種間相互作用の強度や符号を検出することにも成功した。そして、この手法を舞鶴湾での20年にも及ぶ潜水調査から得られた魚類時系列データに適用し、種間相互作用の強度や符号が季節変動する様子を得ることができた。この他にも理論的な検討から、間接効果と直接効果を区別する手法のアイデアをいくつか得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成28年度までの成功を目指していた、時系列データから相互作用の強度や符号を推定する手法の開発と実データによる実証テストを、一年繰り上げて行うことができた。さらに、平成29年度に行う予定の種間相互作用ネットワークの構造-安定性関係の研究に不可欠な、生物群集安定性評価のための新しい手法の開発に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
種間相互作用の検出手法、および群集動態安定性の評価手法の開発の成功をうけて、今後は計画を前倒しして、平成29年度に行う予定であった構造-安定性関係を明らかにする研究を進めたい。また、英国草原における食植生昆虫-寄生蜂の時系列データを得たので、これをもとに本手法の有効性をさらに検証していく必要がある。
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Causes of Carryover |
英国および沖縄の研究者の所有する実証データの解析に先んじて、舞鶴湾魚類データの解析を行ったため、資料収集のための旅費が執行されなかったことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度、沖縄への資料収集および討議のための国内出張を予定している。また、時系列データを得る目的でマメゾウムシ実験系を新たに立ち上げることを計画しており、研究の推移によってはこれに使用される可能性がある。
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