2015 Fiscal Year Research-status Report
サンゴと褐虫藻との種特異的な共生関係を生みだす因子の特定
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15K14611
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Research Institution | National Institute for Basic Biology |
Principal Investigator |
高橋 俊一 基礎生物学研究所, 環境光生物学研究部門, 准教授 (80620153)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 共生 / 種特異性 / サンゴ / 褐虫藻 / サンゴ礁 / 環境保全 / 白化 |
Outline of Annual Research Achievements |
造礁サンゴには共生能力を持つ渦鞭毛藻(褐虫藻)が細胞内共生している。サンゴと褐虫藻との共生関係には、種特異性があり、褐虫藻の取込みには制限がある。しかし、種特異性を決める因子は見つかっていない。そこで、本研究では、種特異性を決める要因を明らかにすることを目的とする。初年度はイソギンチャク-褐虫藻のモデル共生系を用い研究を進めた。褐虫藻種の違いで細胞サイズが異なることに着目し、サイズと取込みとの関係を調べた。褐虫藻のサイズは、新たに入手したセルカウンター(Cellometer Auto X4, Nexelom)を用い、従来の結果に比べより正確な測定が可能となった。それぞれの褐虫藻種(15種)で細胞サイズの測定と感染速度の測定を行った。その結果、15種中11種で共生が確認でき、共生出来なかった種はすべてサイズが直径10μm以上であった。共生が確認できた11種において、共生が成立するまでの日数が異なっており、サイズが小さい褐虫藻種がより早く共生が成立することが明らかとなった。褐虫藻の取込みが実際にサイズに依存していることを示すために、異なるサイズの人工ビーズを用い、取込み実験を行った。その結果、褐虫藻の実験と同様に、ビーズの取込みもサイズ依存であることが示された。これらの結果は、共生の種特異性は褐虫藻の細胞サイズと関係があることを示している。これまで、種特異性は宿主や褐虫藻の細胞表面に存在するタンパク質(認識タンパク質)が関与していると考えられてきた。今回の研究結果は、従来の考えを一変する大きな成果だと考えられる。今回の研究結果は、論文にまとめ、国際誌に投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
セルカウンター(Cellometer Auto X4, Nexelom)の購入に十分な予算がなく、導入するまでに時間がかかってしまった。そのため、実験のスタートが遅れた。結局、購入はあきらめ、共同研究者から借りて実験を進めた。その後は実験がスムーズに進み、27年度に予定していた実験をすべて完了することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の研究は、計画通り完了した。28年度も申請書の計画通りに進めていく。27年度の研究では、モデル生物であるイソギンチャクを実験に用い、種特異性と褐虫藻サイズとの関係を明らかにした。28年度は、サンゴを用い、イソギンチャクと同様の実験を行う。また、サンゴの実験では、異なるサンゴ種(2種)を用いて取り込み実験を行い、許容褐虫藻サイズがサンゴ種で異なるかについても明らかにする。最後に、褐虫藻種と細胞サイズとの関係を明らかにするため、カルチャーコレクションより多くの褐虫藻種を入手して測定を行う。当初は100種ほどを予定していたが、予算の関係上50種を入手し、実験に用いる。これらの結果より、サンゴと褐虫藻との共生の種特異性を決める因子を決定する。
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Causes of Carryover |
セルカウンターの購入を予定していたが、十分な経費を確保出来なかったため購入を取りやめた。そのせいで27年度の経費が余ることとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
消耗品(プラスチック容器やセルカウンター用のスライド)の購入費にあてる。また、技術支援員を採用する経費にあてる。
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