2015 Fiscal Year Research-status Report
筋骨格ストレスマーカーMSMは筋力指標の生理的筋断面積や皮質骨の厚みと相関するか
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15K14621
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
菊池 泰弘 佐賀大学, 医学部, 講師 (70325596)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 骨 / 筋付着部 / CT / 生理的筋断面積 / 筋重量 / 筋線維長 / 前肢 / 皮幹筋 |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年度研究計画の中で、骨の撮像に使用予定だったコンパクトCT(XCT 2000 Research+)のX線発生装置が故障したため、骨内部に関連した解析を進めることができなかった。 今年度は、骨から起始し骨に停止する通常の骨格筋とは異なる「皮筋(皮下に起始し骨に停止)」を対象に解剖を行い、筋の骨への影響を厳密に考慮するための基礎的調査を行った。皮筋は、ヒトやヒト以外の類人猿では顔面や頚部に局在しているが、類人猿を除く霊長類やその他の哺乳動物には「皮幹筋」と呼ばれる筋が体幹皮下に存在する。骨への付着は上腕骨大結節のごく小さな部分である。また、皮幹筋は胸筋神経ワナの最尾側から分岐する尾側胸筋神経に支配されるという報告が多数あるが、統一見解が得られていない。筋と骨の関係性を探る本研究において、異種間でも関係性が保たれているかどうか探る目的で、筋の相同性を確認するための「神経-筋特異性」を考慮して、ニホンザル1側の皮幹筋の支配神経と分布域を精査した。結果:皮幹筋には、尾側胸筋神経と肋間神経外側枝が交通後に筋に侵入していた部位、肋間神経外側枝が単独で筋に侵入していた部位、そして後枝外側枝が単独で侵入していた部位が存在することが分かった。考察:皮幹筋は単一の筋というよりは、むしろ異なる神経支配を受ける複数の筋が合わさって形成されたものであることが示唆された。 また、ニホンザル3体6側を対象に、前肢筋(体幹と肩甲骨および上腕骨を結ぶ筋と上腕・前腕に存在するもの)と後肢筋(骨盤から下腿までに存在する筋)を解剖し、筋力と筋の収縮能を表す生理的筋断面積(Physiological cross-sectional area: PCSA)を算出するための筋重量、筋線維長、そして筋線維角を計測した。異なる個体間での解剖作業によるデータ量の差や左右差を調査することによって、解剖手技の正確性を確かめ筋データの精度向上を図った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
骨の撮像に使用予定だったコンパクトCT(XCT 2000 Research+)のX線発生装置が故障し、骨内部に関連した解析を進めることができなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
カニクイザルとニホンザルを対象に、前肢骨に付着する筋について解剖を進める。一つ一つの筋を骨から分離するが、この時、それぞれの筋について、骨の筋付着部周囲にマーカーで印をつけておく。そして、筋を筋実質、腱、腱膜に分離し、筋重量と筋線維長および筋線維角を計測する。これら3つの筋データより筋力指標値(生理的筋断面積:PCSA)を算出する。また、薬品固定の影響を調べるため、それぞれの筋を半年間のホルマリン浸漬後・アルコール置換し、筋重量、筋線維長、筋線維角を再度計測し、PCSAを求める。この作業によって、薬品固定標本における筋データを求める(ヒト御遺体への応用のための筋データとして後に活用)。 次に骨の筋付着部に付けていた印に沿って、CTに感光する特殊な薬品を塗布する。その後、XCT Research 2000+(本年度4月中に修理)を用いて、前肢のそれぞれの骨を撮像する。得られた連続断面データを、三次元再構築ソフトによりPC上で三次元再構築する。三次元データから筋付着部周囲の印を同定し、それぞれの筋付着部の表面積と体積を算出する。求めた体積と表面積から筋付着部の平均皮質骨厚を算出し、骨データとする。その後、骨はウォーターバス(佐賀大学保有)を用いて1週間ほど加熱処理し、骨標本とする。得られた骨標本においてVered Eshed et al. 著(Am. J. Phys. Anthropol., 2004)に従い、骨表面の粗面・結節などについてMSM を7段階で点数付けをする。こうして、生と薬品固定の両方の標本から得られた筋重量とPCSA値、三次元再構築データから得た皮質骨厚、そしてMSMの点数が揃う。今年度は、MSMの点数の明確化を含めた計測・解析プロトコルの確立と、生標本と薬品固定された標本における筋重量とPCSA値の差を求め、薬品固定された標本で得られた筋データから生標本の筋データが推定可能か調査・検討し、前肢における計測値データの蓄積を図る。
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Causes of Carryover |
2015年度研究計画で、骨の撮像に使用予定していたコンパクトCT(XCT 2000 Research+)のX線発生装置が故障し、その修理が2016年4月初めとなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2015年度予算は2016年度予算と合わせてCTの修理費に使用予定である。
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Research Products
(9 results)