2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K14627
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Research Institution | Ishikawa Prefectural University |
Principal Investigator |
濱田 達朗 石川県立大学, 生物資源環境学部, 准教授 (50310496)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | イネ / アスパラギン酸プロテアーゼ / 根圏 / タンパク質 / 窒素源 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. アスパラギン酸プロテアーゼ(ASP)遺伝子をCaMV35Sプロモーターにより過剰発現させた形質転換イネの異なる窒素条件下による生育比較 イネおよびウツボカズラ由来ASP遺伝子(OsASP2およびNaNEP1)をそれぞれCaMV35Sプロモーター(CaMV35S)により過剰発現させた形質転換イネにおいて、異なる窒素条件の培地における非形質転換体(日本晴)との生育を比較した。十分に無機窒素が含まれた培地(MS培地)、および低無機窒素、タンパク質含有MS培地において、どちらの過剰発現体においても非形質転換体との間に有為な生育の違いは見られなかった。 2. 高発現プロモーターによりASP遺伝子を高発現させた形質転換イネの作製および遺伝子発現解析 ユビキチンプロモーター(Ubi)およびアクチンプロモーター(Act)の制御下でシロイヌナズナ由来ASP遺伝子(AtASP1)を発現させた形質転換イネ(Ubi:: AtASP1イネおよびAct:: AtASP1イネ)を、また、ユビキチンプロモーター(Ubi)の制御下でOsASP2を発現させたイネ(Ubi::OsASP2イネ)を作製した。これら3系統の形質転換イネ(T1世代)においてqRT-PCRによる遺伝子発現解析を行ったところ、Ubi:: AtASP1イネおよびAct:: AtASP1イネにおいて、AtASP1遺伝子の発現を確認し、Ubi:: AtASP1イネのほうがAct:: AtASP1イネと比較して、10倍以上の発現が見られた。また、Ubi::OsASP2イネにおいては、非形質転換体と比較してOsASP2遺伝子の発現量が約30倍増加している個体が得られた。また、これら形質転換イネ(T1世代)のホモ系統の選抜をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初の予定では、CaMV35Sプロモーター制御下でOsASP1a、OsASP1b、OsASP2およびNaNEP1遺伝子を発現させたイネにおいて、導入した遺伝子産物由来のASPが根から分泌され、根圏中に存在するタンパク質を分解することが期待されていた。しかしながら、これらの形質転換イネの根圏においてカゼイン分解が見られず、また、低無機窒素、タンパク質含有培地において非形質転換体と生育に有為な差が見られなかった。これらの原因として、遺伝子導入時に用いたCaMV 35SプローモーターではASP遺伝子の発現が不十分であり、根からのASPの分泌が不十分であったことが考えられた。そこで、根からASPが過剰分泌するように、イネにおいて強力な発現プロモーターとして知られているユビキチンプロモーター(Ubi)やアクチンプロモーター(Act)の制御下でAtASP1遺伝子やOsASP2遺伝子を過剰発現させた形質転換イネを平成27年度から平成28年度にかけて作製した。発現させるASP遺伝子として、シロイヌナズナでの実績があるAtASP1遺伝子を、また、AtASP1遺伝子がイネで機能しない場合に備えて、イネ由来のOsASP2遺伝子の2種類を選択した。
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Strategy for Future Research Activity |
イネが根圏中のタンパク質を窒素源として利用するためには、根からの十分なASPの分泌、およびそのASPによるタンパク質分解が必要であると考えられる。ASP遺伝子が過剰発現しているUbi:: AtASP1イネおよびUbi::OsASP2イネを取得できたので、今後、 これらの形質転換イネ用いて、当初の計画であるイネ培養液におけるASPタンパク質のウェスタンブロッティング、ASP活性測定および生育検定実験をおこなう。
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Causes of Carryover |
平成28年度の実験計画が変更となり、実験器具類・消耗品の購入予定金額が下回ったため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
形質転換イネの栽培および解析のための培養土やプライマー、試薬類などの消耗品類を購入する。
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