2016 Fiscal Year Research-status Report
組換え実験で葉緑体に生じたミニサークルの複製機構の解明とベクターの開発
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15K14629
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
寺地 徹 京都産業大学, 総合生命科学部, 教授 (90202192)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 成介 京都産業大学, 総合生命科学部, 教授 (40339122)
山岸 博 京都産業大学, 総合生命科学部, 教授 (10210345)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 葉緑体形質転換 / 葉緑体ゲノム / 遺伝子組換え / プラスミドベクター / パーティクルガン / タバコ / 複製機構 |
Outline of Annual Research Achievements |
葉緑体の遺伝子組換え実験の過程で「斑入りのタバコ」が偶然得られた。本研究は、この組換えタバコに存在する、小さな(20kb)環状DNA分子(ミニサークルと呼ぶ)の解析を通じて、未だ不明な点が多く残されている葉緑体DNAの複製や組換えの機構を明らかにすることを目的としている。これまでの研究で、このミニサークルは、組換え型葉緑体DNAのループアウトにより生じたこと(導入配列と、もとの配列間の相同組換えによる)、コピー数が残りの葉緑体DNAと比べて著しく増大していること(10倍以上)、自殖種子を経て何世代にもわたって安定に保持されることなどがわかっている。 本研究では、ミニサークル上にあると予想される葉緑体DNAの複製に必要な領域を絞り込むため、ミニサークルをさらに小さな断片に分割して大腸菌のプラスミドベクターへクローニングし、これにスペクチノマイシン耐性遺伝子であるaadAの発現ユニットを付加した後、再度、パーティクルボンバードメントにより野生型タバコの葉緑体へ導入する実験を継続して実施している。 具体的には、ミニサークルをHindIIIで消化して、#1(11.3kb)、#2(6.4kb)、#3(4.2kb)の3つの断片に分割し、大腸菌のプラスミドベクター(pBluescriptⅡ)のHindⅢサイトへそれぞれ導入した。その結果、#1と#3の断片をもつプラスミドが得られた。またこの方法でクローニングできなかった#2断片は、さらに#2A(4.1kb)と#2B(2.3kb)の2つに分割し、In-Fusion法でプラスミドベクターへ導入したところ、#2A断片をもつもののみが得られた。これら3種のプラスミド(#1, #2Aおよび#3)に、それぞれaadA発現ユニットを連結して構築したコンストラクトをタバコの葉に撃ち込んだ。その結果、いずれのコンストラクトからも形質転換体を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験により以下の興味深い結果が得られているので、研究はおおむね順調に進捗していると言える。すなわち、1)#2A断片をもつコンストラクトのパーティクルボンバードメントを36回実施したところ13個の形質転換体を得ることができた。#2Aプラスミドが導入された形質転換体の多くのもので、葉が部分的に斑入りとなる、葉に切り込みが入ったようになるなど、特徴的な表現型が観察された。2)13個の形質転換体の葉から全DNAを抽出し、#2Aプラスミドのインサート部分ならびに全長を増幅するPCRを行なったところ、11個で#2Aプラスミドと同じ増幅パターンが認められた。また形質転換体から調製した全DNAを用いて大腸菌の形質転換を行なったところ、10個の全DNAでコロニー形成が確認された。3)各個体に由来するコロニー2つずつからプラスミドをレスキューし、SacⅠおよびKpnⅠで消化したところ、いずれも導入されたプラスミドと同じ制限パターンを示した。また部分シークエンシングの結果から、これらのレスキューされたプラスミドは、導入されたプラスミドと同じ配列をもつことが示された。 以上の結果を総合して、導入されたプラスミドは、葉緑体内で環状を保持したまま存在していることが強く示唆されている。 大腸菌への形質転換でコロニーを形成した全ての個体の全DNAを鋳型に、SYBR Greenを用いたリアルタイムPCRを行ない、導入プラスミドのコピー数を推定した。その結果、導入プラスミド上にある葉緑体DNAの領域は、葉緑体DNAのみに存在する領域より、平均で1.7倍、最大で2.6倍、多くなっており、導入されたプラスミドのコピー数がある程度増加していることが示唆された。しかしこのプラスミドのコピー数は、もとのミニサークルのコピー数には及ばなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
葉緑体内で複製するのに必要な領域をさらに絞り込むため、#2Aプラスミドの各種欠失変異体を作成し、野生型タバコにパーティクルガンで導入する。また、#1, #3の断片をもつプラスミドコンストラクトの導入で得られた形質転換体についても特徴づけを行なう。これらの解析を通じ、葉緑体DNAの複製起点とその強さを明らかにしたい。 平成29年度は形質転換体の後代をとり、導入プラスミドが世代を経て伝達するか調べる必要がある。またaadAの他にGFPをもつプラスミドコンストラクトを新たに作成してタバコに導入し、プラスミドの消長を蛍光顕微鏡で追跡することにより、斑入りとの関係を推察する。
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Causes of Carryover |
非常勤の嘱託職員の雇用により、当初予定していた学生アルバイトの費用が少なくてすんだため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
主として、非常勤の嘱託職員を雇用するために使用する。
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