2016 Fiscal Year Research-status Report
栄養性木本作物における産地判別のための品種内識別DNAマーカーの開発
Project/Area Number |
15K14649
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
八幡 昌紀 静岡大学, 農学部, 准教授 (60420353)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松山 知樹 国立研究開発法人理化学研究所, 主任研究員研究室等, 専任研究員 (30291090)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | イオンビーム / 果樹 / カンキツ / DNAマーカー / 突然変異 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、地域資源を守り、活用を支える品種内識別や産地判別用のDNAマーク開発を行うために、以下の実験を行った。 まず、これまで重イオンビーム照射シキキツとユズの実生について既報の改良RAPD法(Shirao et al., Mol Breed. 31: 729-735, 2013)でDNA多型解析した結果、シキキツ1系統では、原品種にないバンドが多数検出され、ユズ1系統では原品種に対し、バンド消失ないしはシグナル強度が小さくなるタイプのパターンを示した。カンキツの中には1つの種子から2つ以上の芽を出すものがあり「多胚性」と呼ばれる。これは胚のうを取巻く珠心細胞から胚(珠心胚)を生じる無性的生殖に起因し、カンキツ特有の現象である。この珠心胚の発生により、受精があった場合、1つは受精胚となり残りは珠心胚由来の母系クローンとなる。別枝由来の葉を供試しても全て同一であり、これらは受精胚由来系統の可能性が高いと考えられた。また、多型パターンから、前者は他品種の花粉が掛かった他殖、後者は同品種の花粉が掛かった自殖と推察され、新たな育種素材系統の育成に成功した。 さらに、‘太田ポンカン’、ニンポウキンカン、‘こん太’等のカンキツ優良品種にもHIMACの炭素イオンビームで50Gy照射処理を行った結果、これまでに獲得されたDNAマーク付与体が示した生育特性、すなわち生育の遅い実生が高頻度で確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験1の「重イオンビーム照射条件の検討を行い、DNAマーキング技術の確立」(担当:理化学研究所)では、平成27年度に明らかになった照射条件(発芽10日後に50Gyで照射)で、シキキツおよびユズに加え、‘太田ポンカン’、ニンポウキンカン、‘こん太’等のカンキツ優良品種にも処理を行った。DNAマーク付与個体以外に、シキキツからは受精胚由来の実生が、ユズからは自殖由来の実生が確認され、新たな育種素材系統の育成に成功した。 実験2の「開発されたDNAマーク付与系統の形態・形質の評価」(担当:静岡大学)では、これまで育成されたDNAマーク系統および育種素材系統について接ぎ木を行った。また、カンキツ優良品種においても本処理条件でこれまでシキキツ実生で見られた生育異常が確認された。
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Strategy for Future Research Activity |
実験1の「重イオンビーム照射条件の検討を行い、DNAマーキング技術の確立」では、平成29年度も引き続き、これまでの実験で明らかとなった効率的な粒子線照射条件(50Gy)で、カンキツ優良品種の実生に処理を行い、DNAマーク付与体を育成していく。また、接ぎ木したDNAマーク付与体のDNAマークが維持しているかどうかを確認する。 実験2の「開発されたDNAマーク付与系統の形態・形質の評価」では、これまで理化学研究所で育成されたDNAマーク付与体の形態・形質調査を行い、非照射体と比較を行う。また、平成28年度で育成された新育種素材系統についても同様の調査を行う。そして、変異がない場合はDNAマーク付与体として、変異が認められた場合は育種素材としての利用を図る。 最後に、3年間で得られたデータの取りまとめを行う。
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