2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K14658
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Research Institution | Iwate Biotechnology Research Center |
Principal Investigator |
高橋 秀行 公益財団法人岩手生物工学研究センター, 園芸資源研究部, 主任研究員 (00455247)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 花卉 / 休眠 |
Outline of Annual Research Achievements |
休眠は成長や活動を一時的に休止しエネルギー消費を抑えることで、様々な環境変化に適応する生物の生存戦略の1つである。一般的に、植物は気温や日長等の環境変化に対して種子や冬芽等の休眠器官を形成し休眠するが、リンドウではリン酸欠乏に応答した休眠誘導が観察されている。栄養飢餓による休眠は菌類や細菌類に特有の現象とされ、この際起きる代謝抑制機構として緊縮応答が知られている。そこで、緊縮応答の鍵遺伝子であるRSH(RelA/SpoT Homologs)を中心に栄養飢餓と休眠の関与を調査した。 リンドウの休眠誘導がリン酸欠乏に特異的であるかを明らかにするため、主要な必須栄養素を除いたMS培地でリンドウを培養した。その結果、栄養欠乏による生育阻害や葉の黄化等が観察されたが、リン酸欠乏以外の条件で休眠誘導は観察されなかった。このことから、リンドウで観察された休眠誘導は必須栄養素の欠乏による機能障害ではなく、リン酸欠乏特異的であることが示唆された。 休眠とRSHとの関与を明らかにするため、リンドウのRSH遺伝子のクローニングを行なった。リンドウEST情報を基にクローニングを行なったところ、3種類のRSHが単離された。配列情報から、ppGppの合成および分解に関わることが予想されている。また、その中の1つにはEF hand domainが含まれたことから、カルシウムとの関与が推測された。現在、これら遺伝子の高発現体および発現抑制体の作出を行なっている。さらに、リン酸欠乏条件で育成したリンドウで、これら遺伝子の発現解析を行なったところ、調査した全ての品種で発現の上昇が確認された。関連代謝物についても変動が観察されており、緊縮応答との関与が推測された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題では、3つのサブテーマから緊縮応答を介した栄養飢餓による休眠誘導機構の解明を目指し、H27年度は、サブテーマ1と2について解析を予定していた。サブテーマ1の必須栄養素欠乏の休眠への影響では、主要必須栄養素の休眠への影響を調査し、リン酸欠乏のみが休眠器官形成を誘導することを明らかにしている。また、栄養欠乏条件で育成した植物体についてメタボローム解析を実施している。サブテーマ2の緊縮応答による休眠調節機構の解析では、RSHのクローニングを行ない、栄養欠乏時のRSHの発現解析を行なった。また、高発現体および発現抑制体の作出を開始した。これらは当初の計画通りに実施されている。今後は、得られた形質転換体を用いた試験を進める予定である。一方、RSHの機能解析として融合蛋白質の作成を予定していたが、蛋白質は得られたものの期待した活性を有していなかった。これについては、コムギ無細胞発現系またはピキア酵母の系を用いた発現を試みる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、サブテーマ毎の計画通りに解析を進める。サブテーマ1については、栄養飢餓による休眠誘導がリン酸特異的に起こることが判明したことから、リン酸欠乏条件で育成した植物体を用いた研究に集中する。サブテーマ2については、得られた3種類のRSHについて機能解析を進める。現在作出中の形質転換体について、それぞれの遺伝子発現レベルから選抜を行ない、その後の解析に用いる。優良な個体が得られなかった場合は、異なるベクターを利用し新たな形質転換体の作出を試みる。また、H28年度からスプライシングバリアントの探索を開始する。それぞれのRSHについてゲノム配列を決定した後、バリアントを網羅的に検出する。さらに、リン酸欠乏条件で育成した植物体でバリアントパターンを解析し、RSH遺伝子のスプライシング制御と休眠との関与について調査を進める。
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Causes of Carryover |
本年度の計画として、形質転換体の作出し選抜した形質転換体について日々雇用職員を雇用し形質転換体の代謝解析用サンプル調整やRNA抽出等の各種作業を行なう予定であった。作出には約1年を要する計画であったが、一部の形質転換体が選抜途中である。全ての形質転換体が揃ってから作業を開始した方が効率的であるため、次年度に日々雇用職員を雇用し、各種作業を行なうことにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は次世代シークエンサーを用いたRNA-seq解析およびメタボローム解析を予定している。得られた形質転換体からの代謝解析用サンプル調整とRNA抽出、その他ルーチンワークを行なうために日々雇用職員を雇用する。また、形質転換体の確認のため、各種PCRとシークエンスを行なう。
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