2016 Fiscal Year Research-status Report
ブドウ果実の着色制御におけるジャスモン酸の作用機構
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15K14660
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
中嶋 直子 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 果樹茶業研究部門 生産・流通研究領域, 上級研究員 (20332299)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ブドウ / 着色促進 / 植物ホルモン / ジャスモン酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度に実施した圃場における樹上処理では、ジャスモン酸(JA)やその類縁体による着色促進効果が明確でなかった。そのため、着色促進に効果的な処理方法の検討について、計画を変更し2年目に実施した。JA類縁体の中で比較的効果が高かったジャスモン酸メチル(MeJA)を用いた。着色開始期の‘安芸クイーン’及び‘ピオーネ’果粒に対しMeJAを曝露処理したところ、明暗のある条件では果皮の着色が促進され,アントシアニン含有量が対照区に比べ有意に増加し、着色が促進された。一方、暗所では処理の効果がみられなかった。さらに、収穫後の‘ピオーネ’の着色不良の果粒を明暗のある条件で培養し、MeJAの曝露処理を行ったところ、果皮の着色が促進され、対照区に比べ有意にアントシアニン含有量が増加した。したがって、収穫後でも密封した空間においてMeJA曝露処理を行うことで、ブドウ果実の着色不良が改善されることが示唆された。また、JAやMeJAは気化した状態で作用すると推測され、圃場の樹上処理では気化した化合物が拡散し、濃度が低くなるため着色促進効果が得られないと考えられた。 JA処理によるアブシジン酸(ABA)内生量への影響は明確ではなく、ブドウの着色機構の中心的役割を担うABAとの関わりなど、着色機構におけるJAの役割については明らかに出来なかったが、初年度に行った成熟過程にあるブドウ果実の内生植物ホルモン等の変動解析から、JA及びABA以外で着色に関連する因子である可能性が示唆された生理活性物質が見出された。果実に対し、この物質を果粒培養及び樹上で処理を行い、着色に及ぼす影響について調査を行ったところ、‘安芸クイーン’の樹上処理で、対照区に比べ着色が促進された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
圃場処理での効果が確認できないという結果であったため、計画を一部変更し、3年目に実施するはずであったJAの処理条件の検討を2年目で行い、JAがアントシアニン生合成に関わる遺伝子等の発現に及ぼす影響についての解析を3年目に行うこととした。また、JAの着色促進機構における役割の解明については、JAがABA内生量に及ぼす影響が明確でなく、JA、ABA以外の着色促進に関わる生理活性物質が示唆されたため、その物質についての検討を行っている。したがって、計画の変更はあるが、研究としては新たな展開があり、順調に進んでいると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
JA類の効果的な処理条件の検討は、これまでの結果から収穫後処理が有効であることが示され、圃場処理では効果が明確ではなかった。そのため、計画していた着色不良を起こしやすい生育条件での処理が難しいことから、この検討は行わず、着色不良となった果実への収穫後処理条件の検討を行う。また、同様の理由から、ABAとの混用処理条件の検討をすることも難しいため、実施を見合わせる。代わりに、前年度までの結果から、JA、ABA以外で着色促進に関わることが示唆されている生理活性物質を用いた着色促進について、メカニズムも含め詳しく解析し、処理条件等を検討する。さらに、計画していたJA処理によるアントシアニン合成酵素遺伝子等の発現への影響については、JAの収穫後処理における解析を行うことを予定している。
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Causes of Carryover |
初年度の結果で、JAの圃場処理の効果がみられなかったため、3年目に予定していたJAの効果的な処理方法の検討を前倒しで2年目に実施し、JA処理後のアントシアニン生合成遺伝子等の発現解析やABA内生量変動の分析を3年目に実施することとした。そのための分析用試薬及び分析機器消耗品、研究補助者の賃金を、2年目に使用しなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2年目に計画していたが、3年目に持ち越した実験等に使用する。具体的には、JA処理によるアントシアニン生合成遺伝子等の発現や植物ホルモン内生量への影響解析である。これまでの試験により、ブドウ果皮の着色を促進できるJA類縁体の処理方法が明らかになったため、実施が可能となった。そのための試薬や分析機器用消耗品、研究補助者の賃金として使用する。
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Research Products
(1 results)