2015 Fiscal Year Research-status Report
ミトコンドリア感染性ウイルスの感染機構の解明と有効利用
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15K14663
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
鈴木 信弘 岡山大学, 資源植物科学研究所, 教授 (70206514)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ミトコンドリア / ミトウイルス / 菌類ウイルス |
Outline of Annual Research Achievements |
=ミトウイルスの感染様式(移行、伝染、宿主範囲、病原性)を主に細胞融合法を用いてに明らかにする= 1. 感染菌から非感染の菌糸融合和合性菌へ菌糸融合により水平移行が起こることを、クリ胴枯病菌標準株で確認した。2. ミトコンドリア感染率を検定するため、クリ胴枯病菌株NB631(CpMV1に感染)から細胞分画法によりミトコンドリアの精製を試みた。現在ミトコンドリア標的マーカーでラベルした蛍光蛋白質遺伝子でミトウイルス感染菌株を形質転換に成功した。この菌株を使用して精製をモニターする予定である。3. ハイグロマイシン耐性遺伝子をもつシロイヌナズナT87培養細胞(既に整備済み)あるいはタバコBY2培養細胞をクリ胴枯病菌NB631とプロトフージョンさせた。しかし、これまでのところ、結果は陰性である。4.ウイルス感染、非感染の同質遺伝子系統を比較し、ミトウイルスの病原性(宿主菌の呼吸機能、生育、植物へ病原性)を常法により調べた結果、病原性の衰退を引き起こさないことが判明した。5. ミトコンドリアで複製するミトウイルスがRNAサイレンシング(核支配の宿主防御機構)の影響を受けるかをRNAサイレンシング欠損株(クリ胴枯病菌標準株EP155の遺伝子破壊株、Nuss博士から分譲を受けた)を用いて調べたが、その影響は認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
修士課程の学生が就職のため退学したため、予定より若干遅れている。現在、留学生とともに、本研究を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
=ミトウイルス複製部位の確認と感染性クローンの構築を目指す= 8. a.ミトウイルス(CpMV1)の複製がミトコンドリアで行われることを証明するため、精製ミトコンドリア画分を用いてミトウイルスのin vitro複製装置の再構築を試みる。In vitroまたはin vivoで合成したウイルスRNAとタンパク質(RdRp)を各細胞画分のライセートに添加し、マイナス鎖RNA合成を指標としてウイルス複製を評価する。石川らによって開発されたタバコモザイクウイルスin vitro複製系を参考とし、ミトコンドリア成分共存下において特異的にミトウイルスが複製することを示す。b. CpMV1-RdRpとウイルスRNAの複合体がミトコンドリアのどの部位で検出されるかを免疫電顕法で詳細に観察する。ミトコンドリアの切片を得やすくするために、ミトコンドリア画分(Neurospora crassa由来のミトコンドリア局在性蛋白質NTPase Subunit 9とGFPの融合蛋白質:Su9:GFP標識)を精製し、超薄切片を作製する。9. ミトコンドリアで使われるtRNA(RNA用)とATPase(RdRp蛋白質用)の輸送系に牽引させる手法を採る。a. tRNA配列をミトウイルスへ付加する。リボザイムにより輸送後にtRNA領域が分離されることを期待する。導入ウイルス核酸としてDNA(核ゲノムからウイルスRNA供給)あるいはRNA(電気穿孔法により直接供給)ベースの試料を用いる。b. ミトウイルスRdRpにATPaseの輸送シグナルを付加、細胞質内でミトウイルスRNA(核ゲノムから供給)-RdRpの特異的結合の後、ミトコンドリアへの輸送・放出を期待する。核型コドンに改変したRdRp遺伝子を合成後、輸送シグナルとの融合タンパク質遺伝子を構築し、宿主の核染色体へ導入する。10.逆遺伝学を用い、ウイルス複製、病徴発現に必要な領域の同定、ベクター化を進める。
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Causes of Carryover |
当初本研究を進める予定であった学生が就職のため退学した。そのため、研究が少し予定より遅れてしまった。その結果、研究費の次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
新たに入学した修士課程の留学生と本研究を強力に推進する予定である。
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Research Products
(1 results)