2016 Fiscal Year Research-status Report
低温で卵態休眠が誘起されるスミスアケハダニにおける休眠遺伝子の特定
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15K14668
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
後藤 哲雄 茨城大学, 農学部, 教授 (60178449)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 応用動物 / 遺伝子 / ゲノム |
Outline of Annual Research Achievements |
トランスクリプトーム解析 (RNA-Seq) から得られた計195遺伝子のスミスアケハダニ休眠遺伝子候補について、逆転写リアルタイムPCR (q-RT PCR) を用いた詳細な発現解析を行い、休眠卵産下雌と非休眠卵産下雌の間における発現量の差が顕著な遺伝子を選抜した。RNA-Seqによる結果と、q-RT PCRの結果は概ね一致した。休眠卵産下雌における高発現遺伝子の上位10遺伝子では、発現量の差はおよそ5倍から110倍であった。非休眠卵産出雌における高発現遺伝子の上位10遺伝子では、発現量の差はおよそ6倍から80倍であった。これらの有力な候補遺伝子について、ナミハダニのゲノム情報を用いた機能予測を試みた結果、休眠卵産下雌で高発現の遺伝子と非休眠卵産下雌で高発現の遺伝子の両方で機能未知の遺伝子が6/10であり、新規性が高い遺伝子が多く含まれていた。 これらの遺伝子のRNAiを行うために、3種類の経口摂取法によりスミスアケハダニにdsRNAを投与し、手法間で有効性を比較した。第一に、糖を含んだ人工飼料でdsRNAを溶解して、パラフィルムで挟んで与えるパラフィルム法、第二に、飼料であるイチゴ葉の裏面からdsRNA溶液を吸収させるFloating法、第三に、イチゴ葉にdsRNA溶液を塗りつける塗布法について、15日間処理を行い、期間中のRNAiによる遺伝子発現の抑制効果、生存率および産卵数に基づいて最適な投与法を検討した。その結果、遺伝子発現の抑制が長期にわたり最も安定して観察され、生存率および産卵数が最も高かった塗布法が最適な投与法であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
RNAi法の検討の結果、dsRNA溶液を飼料である植物葉の表面に塗布することにより、効率的なRNAi法の実践が可能であることがわかった。また、新規性が高い遺伝子が多く含まれる休眠遺伝子候補の選抜も既に終えている。
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Strategy for Future Research Activity |
スミスアケハダニの休眠卵産下雌成虫を材料として、塗布法を用いたRNAiを、選抜された休眠遺伝子の候補遺伝子について順次試みていく。RNAiによって発現を抑制した遺伝子が休眠遺伝子であるかどうかの判定は、処理後に産下された卵が休眠卵のままであるか、非休眠卵に変化したかを経時的に観察することによって行う。25℃において、スミスアケハダニの卵期間は最大で5日間であるため、その期間内に孵化した卵は非休眠卵であると判別できる。また、スミスアケハダニでは卵の色が休眠卵は橙色、非休眠卵は白から黄色と異なるため、卵色も判別基準として用いる。非休眠卵の産下が確認され、休眠遺伝子が特定できた場合は、他の生物との相同性検索やアミノ酸のモチーフ解析などの手法を用い、遺伝子の特徴を明らかにする。その過程で、休眠決定の上流および下流の遺伝子が予想できた場合、それらの遺伝子についても同様の手法で休眠との関与を明らかにすることによって、スミスアケハダニの休眠の分子メカニズムを解き明かす。
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Causes of Carryover |
薬品等の購入時に端数が生じたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
消耗品の購入時に合算して使用する。
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Research Products
(2 results)