2016 Fiscal Year Research-status Report
外来植物ナガエツルノゲイトウの茎断片化増殖様式の研究と効果的駆除・肥料化法の開発
Project/Area Number |
15K14672
|
Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
高橋 秀典 東邦大学, 理学部, 准教授 (70318210)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | ナガエツルノゲイトウ / 特定外来生物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の材料は、特定外来生物に指定されている水生植物のナガエツルノゲイトウである。ナガエツルノゲイトウの茎は中空であるために自然界でも容易に断片化するが、そこから個体再生して繁殖してしまうという問題をもっている。平成28年度はまず、平成27年度に行った茎断片からの個体再生と光との関係に関してさらに研究を深めた。明暗条件や培地に添加する薬剤の条件をいろいろ変えてナガエツルノゲイトウの茎断片を培養した結果、茎断片からの個体再生には光が必要であることが確認された。本研究の成果は、ナガエツルノゲイトウの駆除で使われている遮光シート法の有効性に対して学術的裏付けを与えるものとして評価できる。 次に、ナガエツルノゲイトウの茎断片からの個体再生がどのような遺伝子により制御されているのかを明らかにするための手段として、ある条件で発現が増加あるいは減少している遺伝子を探索するのに適した、ディファレンシャルディスプレイ法を用いた解析を行った。ナガエツルノゲイトウの植物体から人為的に切り出した直後の茎断片、あるいはそれを培養した後の茎断片からそれぞれ全RNAを抽出し、これらの全RNAを用いてディファレンシャルディスプレイ法を行った。全RNAからmRNAを精製したり、ゲノムDNAの混入の可能性を排除するためにDNaseI処理も行うなどの工夫をこらしたが、現時点では前述の2つの条件の間で濃さの異なるバンドを検出するには至っていない。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成27年度、28年度の合計2年間の研究により、特定外来生物に指定されているナガエツルノゲイトウは茎からだけでなく根からも個体が再生すること、そして、茎断片からの個体再生には光が必要であることを明らかにすることができた。近年ナガエツルノゲイトウを駆除するための方法の1つとして、植物体を遮光シートで覆い光を遮断する方法が注目されているが、この遮光シート法の有効性に関してはこれまで明確な学術的裏付けがなかった。そのため、本研究ではこの点を明らかにすることを目的の1つとして掲げていたが、上記のように目的を達成できたことは一定の評価に値すると考えている。 しかしその一方で、ナガエツルノゲイトウの茎断片からの個体再生がどのような遺伝子により制御されているのかを明らかにするため、ディファレンシャルディスプレイ法を用いた解析を行うことも予定していたが、こちらに関しては全RNAからのmRNAの精製や、DNaseI処理によるゲノムDNAの除去などの工夫をこらしたが、現時点では候補となる遺伝子を単離するには至っていない。 従って、これまでの2年間で得られたこれらの研究成果の内容を総合的かつ客観的に考えると、根からの個体発生の可能性の確認や、茎断片からの個体再生における光の役割を明らかにできたという「プラス」よりも、ディファレンシャルディスプレイ法で発現量に差のある遺伝子を単離できていないという「マイナス」の方が大きいと考えられ、現在までの達成度は「やや遅れている」と判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
ディファレンシャルディスプレイ法による発現量に差のある遺伝子の単離に関しては、現時点で明確な解決策が見えていない。しかし、平成29年度は申請している研究期間の最終年度にあたる。引き続きディファレンシャルディスプレイ法にこだわるのも1つのやり方ではあるが、やはり研究期間全体としてみたときに一定の成果をあげるべきかと思っている。そこで、平成29年度はディファレンシャルディスプレイ法による発現量に差のある遺伝子の単離も継続して行うが、そればかりに注力するのは避け、当初平成29年度に実施を計画していた内容である「植物体回収法や遮光シート法に変わる新しい駆除法の探索」も並行して行う。 ただし、これはあくまでも現時点での予定であり、実際に着手してみると「植物体回収法や遮光シート法に変わる新しい駆除法の探索」に関してもうまくいかなかったり、確たる成果が出るまでに予想以上に時間を要する、といったこともありうる。あるいは、ディファレンシャルディスプレイ法が早期に問題点を克服できることも考えられる。そのような場合は、いずれかの実験に絞り込んで集中的に行ったり、研究計画の順番を入れ替えるなど、実際の研究の進展具合を見極めながら臨機応変に研究を推進していく予定である。
|
Causes of Carryover |
平成28年度に購入した物品や消耗品は、値引き交渉を行ったり安価な代替品を探し出すことで、当初想定していた価格よりも安価で購入することができたものが多かった。そのために、使用額の合計も想定よりも少額で済んだため、次年度使用額が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度分の残額は平成29年度配分額とあわせて、平成29年度の研究で必要となる物品や消耗品の購入に充てる予定である。
|