2015 Fiscal Year Research-status Report
イネの葉維管束組織におけるグルタミン酸合成統御を介したイネ白葉枯病防御の分子基盤
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15K14674
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
早川 俊彦 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (60261492)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 遺伝子 / 植物 / 生理学 / 病理学 / 発現制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、イネ葉維管束組織グルタミン酸生合成統御系でのグルタミン情報感知候補OsACR9とその相互作用因子OsVOZ2の個別・連携機能解析を主に行った。 ・BiFC法により、OsACR9とOsVOZ2のin vivo相互作用を解析した。OsACR9及びOsVOZ2のC末端にN末端側またはC末端側の分割EGFPを融合したキメラタンパク質の遺伝子を、粒子銃法により、タバコ葉で一過的導入発現させ、各遺伝子翻訳産物の相互作用に起因した再構成EGFP蛍光を共焦点レーザー顕微鏡で観察した。この結果、OsACR9とOsVOZ2の相互作用に起因する蛍光を核とサイトゾルで観測し、植物細胞内でのOsACR9とOsVOZ2の相互作用が示唆された。また、アグロバクテリア浸潤法により、タバコ葉でOsACR9-HisタグとOsVOZ2-FLAGタグの組換えタンパク質の遺伝子を一過的に個別・共導入発現する実験系を構築し、共沈降解析を遂行中である。 ・OsVOZ2-mRFPキメラタンパク質遺伝子を、粒子銃法にてタバコ葉に導入し、一過的に発現させる実験系を構築した。今後、FRAP法により、in vivoでのOsVOZ2の細胞内動態と消長を解析する。 ・OsACR9のRNA干渉法遺伝子を導入した形質転換イネ自家受粉後代(T2)において、分げつ未抽出葉でのRNA干渉法遺伝子発現と顕著なOsACR9タンパク質減少が認められた独立2系統を選抜した。これらの系統の自家受粉T3世代の幼植物の根では、グルタミン供給後のグルタミン応答性IDHc;1遺伝子の発現が顕著に抑制された。以上は、OsACR9がグルタミン情報伝達系に機能関与することを示唆した。なお、OsACR9とOsVOZ2の遺伝子破壊イネ候補のTos17挿入変異体を、三次元ライブラリースクリーニングしたが、変異体は検索できなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本年度は、OsACR9とOsVOZ2の植物細胞内での相互作用を示すことができた点や、OsACR9発現抑制イネを用いて、OsACR9がグルタミン情報伝達系に関与することを示唆できた点は、評価できると考える。 しかし、共沈降解析のための、OsACR9とOsVOZ2の各種タグ融合タンパク質の植物細胞内での一過的個別・共導入発現系の構築が、発現タンパク質の分解などにより困難を極めた。この一過的個別・共導入発現系を構築できたが、大腸菌内発現組換え(r)OsACR9とrOsVOZ2を用いた、in vitroでのシグナル候補分子存在下での相互作用解析や、イネ葉OsACR9-OsVOZ2情報伝達系上流・下流相互作用因子の選抜ならびに、OsVOZ2の細胞内移行・分解関連因子の検討を行うことができなかった。また、本研究では、イネ白葉枯病菌の発症エフェクターXopNのイネ標的因子OsVOZ2を介した防御応答阻害機作の解明も行うが、XopNの遺伝子単離とOsVOZ2との相互作用解析は遂行できなかった。さらに、OsVOZ2特異抗体を作成できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
OsVOZ2抗体の作成、OsVOZ2遺伝子にT-DNAが挿入されたイネ変異体の韓国浦項工科大学からの入手及びイネ白葉枯病菌のXopN遺伝子の単離を最優先で行う。また、タバコ葉でOsACR9-HisとOsVOZ2-FLAGの組換えタンパク質を一過的に個別・共発現する実験系を構築できたため、共発現後の共免疫沈降解析によるOsACR9とOsVOZ2の相互作用の再検証やこの際に共沈降するタンパク質のペプチド解析によるOsACR9-OsVOZ2系上流・下流相互作用因子候補の選抜を遂行する。同個別発現後の各粗酵素液を脱塩処理後にシグナル候補分子添加下で混合してから、共沈降解析することにより、シグナル分子同定を試みる。OsACR9発現抑制形質転換イネは獲得できたので、これらの葉における窒素代謝系・関連炭素代謝系の酵素群とOsVOZ2の発現蓄積ならびに窒素利用機能・バイオマス生産の解析及びトランスクリプトーム解析を遂行し、イネ葉維管束組織グルタミン酸生合成統御系でのOsACR9とOsVOZ2の連携機能に関わる知見を得る。これらの研究とともに、平成28年度研究計画を遂行する。
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Causes of Carryover |
平成27年度研究計画においては、特にOsVOZ2抗体の作成とOsVOZ遺伝子破壊イネの単離を完遂することができなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度からの継続研究計画の内、OsVOZ2抗体の作成と韓国浦項工科大学からのOsVOZ2遺伝子T-DNA挿入イネ変異体の入手に関わる研究費は、平成27年度から平成28年度に持ち越した。また、平成28年度の研究計画遂行にかかる研究費は申請額と同額である。従って、研究遂行に問題は無いと考える。
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