2016 Fiscal Year Research-status Report
ヤムイモ(Dioscorea spp.)の窒素固定細菌との共生に関する研究
Project/Area Number |
15K14680
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
志和地 弘信 東京農業大学, 国際食料情報学部, 教授 (40385505)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 作物学 / 育種学 / ヤムイモ / 施肥技術 / 窒素固定細菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヤムイモとはヤマノイモ科の植物の食用種を指す。先進国ではなじみがないヤムイモであるが世界では約6500万トン生産され、主食として重要な地域もある。しかし、その生産は伝統的な農法で行われており生産性が低い。そこで、生産性を上げるために化学肥料を施す試みは多くの研究者が行っているが、イモの収量に及ぼす化学肥料の効果は不明なままである。申請者らはヤムイモの新品種の育成過程で(科研基盤B平成25-27年度)窒素肥料がなくても生育する品種を見いだした。この品種の植物体の窒素同位体δ15Nを測定したところ、空気中の窒素を固定している可能性を発見した。その窒素固定寄与率は38%と非常に高かった。マメ科に似た特性をヤムイモが持つことを発見したのは世界で初めてであり、本研究では共生菌の探索と窒素固定能力を明らかにすることを目的にした。 昨年までの実験の結果、ヤムイモから窒素固定細菌を分離することに初めて成功した。DNA解析で特定されたダイジョの窒素固定細菌は根粒菌のRhizobium、Ralstonia属の他、Bacillus、Azospirillum、Pantoea、Shinella、Kosakonia属や最近サツマイモから見つかったPantoea属であった。昨年には本学の宮古亜熱帯農場で保存するトゲイモ(ヤムイモの一種)からも根粒菌のDevosia属やAzospirillum, Klebsiella, Xanthomonas属が見つかり、ヤムイモの多くの種・品種には窒素固定細菌が内生することが示唆された。昨年度には宮古亜熱帯農場で保存するトゲイモ(ヤムイモの一種)からも根粒菌のDevosia属やAzospirillum, Klebsiella, Xanthomonas属が見つかり、ヤムイモの多くの種・品種には窒素固定細菌が内生することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年の実験では本学の宮古亜熱帯農場で保存するトゲイモ(ヤムイモの一種)からの窒素固定細菌の分離を進めた。その結果、根粒菌のDevosia属やAzospirillum, Klebsiella, Xanthomonas属が見つかり、ヤムイモの多くの種・品種には窒素固定細菌が内生することが示唆された。これらの結果は、日本熱帯農業学会で発表した。現在、ダイジョ(ヤムイモの一種)の20品種について窒素固定細菌の内生を調査中である。
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Strategy for Future Research Activity |
培養法により2種のヤムイモから13属の窒素固定細菌の分離が完了した。昨年度までに細菌フリーのダイジョInvitro植物体を作成しており、増殖作業を開始する。今年度はこれまで分離した細菌をInvitro植物体に接種して、窒素の固定能力を調べる。また、ヤムイモの植物体中に細菌が内生していることが確認されたが、これまでの実験からは窒素固定細菌がどのようにして共生関係に至るのかは不明である。そこで、ダイジョに内生する窒素固定細菌の起源の推定を行う。
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Causes of Carryover |
研究が順調に進んできて、研究対象の作物を栽培している沖縄県、鹿児島県への3月出張が不要になったため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度は研究計画を前倒しで実施する。
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